CONVERSATION座談会

進学を機に東京に移り住んだ若者が考える地域と生活

若者が集まり、ふるさと納税や地域について議論するFurusato Hot Times座談会。
第2回は進学をきっかけに地域から東京に生活の拠点を移した若者が集まり、
そこで感じた地元とのギャップ、将来どこで、どのような生活を送りたいのか意見を交わしました。

  • 井出 凜太郎22歳

    出身:群馬県前橋市(まえばしし)

    < ふるさとのココが自慢 >
    焼きまんじゅう、永井酒造の水芭蕉

  • 大神 福登21歳

    出身:奈良県生駒市(いこまし)

    < ふるさとのココが自慢 >
    ふるさと納税でお礼の品にもなっている
    イコマ製菓本舗のレインボーラムネ

  • 西村 昇一郎21歳

    出身:兵庫県養父市(やぶし)

    < ふるさとのココが自慢 >
    マイナンバーカードの申請率が
    全国の自治体で2位

  • M.K

    出身:長野県千曲市(ちくまし)

    < ふるさとのココが自慢 >
    姨捨の景色、温泉がたくさんあること

その趣旨にもう一度立ち返るべき

ふるさと納税にどんなイメージを持っていますか?

井出 「地場産品の魅力を伝える場」。母親の実家がある静岡県の小山町が高校生のころ、ふるさと納税の返礼品で問題になっていたのが印象に残っています。その報道を見てふるさと納税はきちんと地域の魅力を伝える形で制度が運用されなきゃいけないんだな、と感じたのを覚えています。

大神 魅力的な制度ではあるけれども本義に立ち戻らなければならないと思います。本来の制度の目的は自分の出身地に寄付をすることだと思っています。返礼品が一番の目的になってしまうのはそもそもの制度の本義に反しているのではないでしょうか。

西村 目的はすごくいいけれども問題が多い、というイメージです。制度の目的の一つである自分のふるさとに寄付金という形でお金を納めることができる、というのはとても良いと思いますが、実際の運用上の問題は多いのではないかという印象です。逆進性があったり、一部の自治体だけが多くの寄付金を集めることになるなどの問題があると思います。

K 税金の自由度をあげることができる、という点が面白いと思います。例えば東京に住んでいる人も自分の好きな地域に税金を納めることができます。これはある意味で自分の住む自治体の在り方にNOを伝える意思表明にもなるし、逆に好きな自治体に対しては応援することができる、という点で納税者の視点から見ると興味深い制度ではないでしょうか。
もうひとつは自治体の創意工夫が凝らされるという点です。税金をどのように集めるか試行錯誤を重ねることで自治体の面白い取り組みも生まれると考えているので制度そのものはとても良いものだと思いますね。

ふるさと納税の目的は何だと思いますか?

井出 何人かの言葉にあったように「ふるさと納税の目的」ってどういうものかもう少し詳しく言葉にするとどうなりますかね?

西村 例えば僕たちのように地域から生活の場を都市部に移した方が、ふるさとのために寄付という形で税金を納められること、それが制度の趣旨だと思います。

大神 制度上は税制ですが、根本にある目的は「寄付」だと思います。僕の出身地の奈良県生駒市は教育に力を入れていて、子どもたちの育成にお金を投じています。しかし、実際に多くの学生は地元を離れ、都市部に住んでしまいます。そうすると地域として子どもを大切にしても、その子どもが納税する年齢になったときには都市部にいるということが非常に多くなっています。こうして生じた格差を是正するために寄付金という形で自分のふるさとに還元する、というのが本来の目的ではないでしょうか。

井出 学生である自分たちは、まだふるさと納税制度を利用する立場ではありません。みんなはどこでふるさと納税に興味を持ったり、知るきっかけになりましたか?

西村 僕の実家は何百年も続く味噌蔵を経営していて数年前まで実際に返礼品として提供していました。実家がふるさと納税に直接関わっていた、ということが大きかったと思います。後は最近印象的だったのが大学で所属している弁論部で、先日指導していた後輩がちょうどふるさと納税について話をしていました。彼はふるさと納税の逆進性、つまり高所得者ほど返礼品をたくさんもらうことができることについて問題意識をもっていました。そこでふるさと納税について一緒に調べたことで興味を持つようになりました。

大神 家族が制度を利用していてよく肉などの返礼品が届いて食べていたことが最初にふるさと納税に触れたきっかけだと思います。

K 僕は家族が制度を利用していた訳ではないのでニュースで見て興味をもったのが最初です。

井出 地域から生活の場を都市部に移したという点は、ここにいる全員が共通していることだと思います。これから就職してどんなふるさと納税をしたいですか?そもそもふるさと納税をしますか?しませんか?

K 働き始めたらやると思います。3つの地域に分けてふるさと納税をするつもりです。僕は旅行が好きなので旅行先で魅力を感じた地域に応援の意味をこめてする寄付を2か所に、それと地元である長野県千曲市への寄付をしたいです。

井出 今までの旅行先で愛着がわいた地域はどこかありましたか??

K 香川県観音寺市です。僕が好きなアニメの舞台なのですが、アニメの舞台となった土地に旅行することで追体験を楽しむことができました。あとは静岡県伊東市です。旅行をしたときにとてもきれいな海だったのが印象的でした。

西村 僕の好きな食べ物やお酒がある地域を選び、その地域の味を楽しみたいと思います。

大神 僕は長野県の大町市に寄付をしたいです。僕は音楽をやっており、大手楽器メーカーの生産地である大町市の返礼品のギターを使うことで、大町市を応援することと趣味を充実させることを両立させたいです。

将来住む場所は街の魅力から考える

そもそもなぜ地域から東京の大学に
進学しようと思ったのでしょうか?

西村 やはり東京への憧れがあり、大学進学を機会に東京へ行ってみたいと思い大学を選びました。

大神 今在学している早稲田大学への憧れが強かったからです。中学生のときに漫画「島耕作シリーズ」を読んで大学の校風、雰囲気に憧れを持ち進学したいと思っていました。もう1つは地元での人間関係の狭さになんとなく窮屈さを感じていたので東京に行きたいと思いました。

K いったん地元の大学に進学したのですが、東京は人も多く、多様性のある面白い人々に会うことができるのではないかと思い改めて東京の大学に入学しなおしました。

井出 ラグビーをやっていて今の大学が憧れのチームだったことがあり、なんとなく進学したいと思うようになったのがきっかけです。また、東京に住んでいる叔父からも東京では様々なイベントが開催されたり、たくさんの人に会うことができるという話を聞いていたので東京の大学に進学したいと考えていました。

実際に東京に住んでみて
地元との違いを感じたことはありますか?

K 面白い人がいて可能性が広がったと感じています。大学生活を通じてとても議論が上手い人や頭の良い人、大企業で働く人、色々な人に会うことができました。そのような人々と会話を重ねるなかで自分の可能性というものは間違いなく広がったと思います。ただ地元と比べると便利さという観点では意外に変わらないです。今ならネット通販を使うことでどこでも買い物ができますし技術の発達も相まって利便性という観点でそう違いはないと考えています。

大神 機会の多さと深さ、人との関係性の距離感の違いです。色々な人と会えることでインターンやイベントに参加したりするチャンスは多いと思います。また、機会の頻度だけではなく何か挑戦したことを更に発展させやすいという点でその深さもあると思います。距離感という観点では、僕の出身地域では噂話などがすぐに広まりやすいという点で息苦しさを感じていました。東京では少なくとも自分がここまで関わった範囲においては、そういった話に関心が強くないというか、人との関係で一線をおいている人が多いなと感じています。その関係の在り方が「冷たい」や「人情味がない」などの表現になることがあるのかもしれませんが、僕にとってはそれが適度な距離感で過ごしやすかったです。

西村 シンプルですが人の多さが一番の違いだと思います。人がたくさんいるからこそ、その場所は繁栄するし、より多くの人に会う機会も増える。人がたくさんいるからその中で格差も競争も生まれやすい。東京という町はそのような点で面白く、時に冷たい町だと思います。

井出 衝撃的だったのは隣に住む人のことを全く知らないということでした。地元では登下校の際などに近所の方に声をかけられたりすることも多く、なんとなく名前を知っている人が多かったのですが、東京に住んでからはそういうことはなくなったと思います。逆に意外と変わらないと感じたのは情報の伝達速度です。インターネットの発達もあって取り入れる情報の速度自体はそこまで差がないです。ただその情報のなかでも触れて感じる空気感のようなものは違うと思います。大都市の広告やイベントのデザイン、そういったものに常に最先端なものを感じます。

K 確かに今アツいビジネスの話など、人と人との間でやりとりされる情報については東京の方が強いのかなと思いますし、速度に違いはなくても情報の性質に違いがあるかもしれません。

井出 東京の人間関係の希薄さのようなものを心地よいと感じる人もいればそうでない人もいるんだろうと思います。この人との関係性への好みの何が大きな影響を及ぼしているんでしょうか?例えば僕たちは地元から東京へ来たからこそ関係の希薄さを感じるかもしれませんし、世代間の差もあるかもしれません。若い人はオンライン上でも様々な関係を結びやすいからこそ、現実の関係性をそこまで重視していないのかもしれません。

将来地元に帰りたいと思いますか?

大神 僕は将来多拠点生活をしたいので他の地域と東京どちらでも生活をしようと思います。でも地元には帰らないかもしれません。東京の利便性と素敵な町並みや風景のある地域の両方を楽しみながら生活したいと思っています。

K 地元に帰る/帰らないの対立軸ではなく東京と長野、両方にいたいです。東京は確かに色々な人がいて面白い町だと思います。しかし、希薄な人間関係や満員電車などストレスを感じる場面もあるので、地元にも戻って小中高生時代の友人と遊んで温泉にいったり、家族に会ったりといった濃い繋がりを楽しみたいです。東京と地元、両方の良いところを楽しんで自分の人生を豊かにしていきたいと思います。
また、地元に限らずあまり縁がない土地に根をおろして様々な体験を味わうのもいいかなと思います。

井出 大学卒業後しばらくは東京に住むつもりですが、将来的には地元の群馬県や他の地域に行こうかなと思っています。情報の性質という点で学びになる点が多いと考えているので社会人になってしばらくは東京で働きます。ただ東京で子育てや生活を行うのは大変だと思うこともあり別の地域で暮らそうかなと思います。しかし東京で出会った人はそのまま東京にいることが多いと肌感覚で感じています。東京の人同士のつながりが希薄だという話がありましたが、逆に同じ時間や出来事を共有した人との関係はとても濃密であったと思います。そこで、そのような人ともすぐにまた会えるよう、比較的東京から遠くない場所で暮らしたいと思いますし、地元である群馬県はその点で適当なのかなとも思います。

西村 僕の実家は家業をやっているということもあり、先祖や土地とのつながりの意識がとても強いと感じています。ただ僕はあまりそういったものへの強い愛着はないかもしれません。今を生きている自分が楽しく、自由にいられるよう、地元に帰るということを強く意識はしていません。

村上 ふるさと納税という制度がうまく回っていくためには、やはり「共感」が肝になりそうと今回の座談会に参加して感じました。同世代のふるさと納税のアンバサダーがいたりすると、強い影響を受けそうです。友達や周囲の人を通じて共感が広がっていくSNSみたいなつながりが、私たちの世代では鍵になっているのだと思います。

主催者よりひとこと

今回は進学を機に生活の拠点を東京に移した学生に話を聞きました。若者が東京に就職してそのまま東京に生活の根をおろしてしまう、そこで生まれる税金の格差是正のためには東京在住でも自分のふるさとに納税をするという選択肢があっていいんじゃないかと思います。今回はそういった課題の当事者でもある学生の話を聞ききました。必ずしも住みたい場所を東京に限定しているわけではなく、自分の人生の選択に合わせて生活の拠点も柔軟に選択しようという姿勢が非常に印象的でした。

Furusato Hot Times 運営 
井出 凜太郎