2023/05/16 (火) 13:58

ブランド和牛『小豆島オリーブ牛』誕生秘話~畜産農家 石井正樹さんインタビュー~

みなさん『小豆島オリーブ牛』はご存知だろうか。

2010年に、ここ小豆島で誕生したブランド和牛である。
日本国内で一般的にはまだまだ知られていない。
恥ずかしながら地元在住の私でもこの仕事を始めるまでは知らなかった。

今回、『小豆島オリーブ牛』の生みの親である石井正樹さんに貴重なお話を聞かせていただいたので、ぜひみなさんにお伝えしたいと思う。

プロフィール

石井 正樹(いしい まさき)
職業:畜産農家
活動エリア:土庄町滝宮

元々、石井さんのご実家は、たばこ、みかんなどを育てる農家だったそう。
有機栽培の循環型農業をしたいと思い農業高校に進学。
昭和43年、高校卒業後、子牛を2頭購入し、畜産農家としての人生がスタートする。

畜産農家としての歩み

子牛2頭から始まった畜産農家。
昭和45年には牛舎を建設し22頭に増頭するまでに成長。
昭和48年、山に電気柵を設置し、放牧飼育を開始。

牛舎を建て放牧飼育を始めた矢先、昭和49年、オイルショックにより負債を負うこととなった。
さらに、子牛はよく食べよく運動するため、筋肉質になり肉が固く、売れないという状況に陥った。

その当時、F1(交雑牛)を飼っていたが、畜産農家として生き残るため、和牛で品質のいいものを育てるべく、今の土地を買って埋め立て・造成して牛舎を建設。
和牛専門の畜産農家をスタートさせた。

畜産農家の1日

朝5時半から仕事はスタートする。まず行うのが牛舎の掃除。
6時に牛に飼料を与え、それが終われば自分の食事。
9時に再度牛舎に向かい、牛の健康チェックを行う。

牛の健康チェック

・エサを食べているか
・歯ぎしりをしていないか
・視力が衰えていないか
・肘(足の関節)の状態
・むくみ
・糞や尿の状態

これを毎日行う。もし異常があれば獣医に連絡する。
月に2回、床替えや、堆肥の切り替えし(発酵が始まっている堆肥を発酵途中に積み替えること)、牧草を巻いたり刈ったりなども行っている。

ブランドへの挑戦

元々、神戸や加古川などの阪神方面に出荷していた。
セリにかけた時、日本食肉格付協会(JMGA)の格付員が同じ目で格付けしているのに「なぜ自分の牛は安いのか?」という疑問が生まれた。
その時「これがブランド力だ!」と言われたそう。

「小豆島あるいは香川県ならではのブランド牛を作ってこい」と言われ、行政、JA、生産者が一同に集まり何度も話し合い行ったが、これといったアイデアは生まれず時間だけが過ぎっていった。

鳥取県で行われていた和牛オリンピック(全国和牛能力共進会)をたまたま見に行ったとき、次回から『オレイン酸(肉のうまみの脂成分)』の数値が審査基準に加味することを耳にしたそう。

島に帰って来てからも『オレイン酸』という言葉がずっと頭に残っており、ふと「オリーブにオレイン酸が含まれているのでは?」と気づき、動物脂と植物脂の『オレイン酸』が融合したらどこにもない面白いものが出来るのではないか?と思ったそう。

『オリーブ飼料』誕生秘話

まずはオリーブの絞り果実をそのまま牛たちに与えてみた。
牛たちが食べてくれるか不安だった。
その予想は的中し、見事に食べてくれなかったそう。

「もしオリーブを食べてくれたらどこにもないブランド牛が出来るのに」と思い、どうすれば食べてくれるのか試行錯誤が始まった。

まず初めに発酵飼料に挑戦した。
しかし、オリーブのシーズンは秋に終わるため、翌年の梅雨から夏場にかけて腐るのではないかと思い、発酵飼料は断念した。

ある時、隣の家の90歳を過ぎたおばあちゃんが干し柿を作っているのを見て、干すことで渋みが抜けると気づき、オリーブの絞り果実を海岸線や倉庫、ビニールハウスなどいろんなところで干してみた。

乾燥させたオリーブの絞り果実を牛たちに与えたところ、喜んで食べてくれたそう。石井さんは感激した。

『オリーブ飼料』を作るのはとても重労働だそう。
1日2回、島内にある東洋オリーブ株式会社にオリーブの絞り果実を取りに行き、広げて乾燥させる。

オリーブの絞り果実はペースト状で重く、すべて乾くまで何度も天日返しを行う必要があるとのこと。
当時は自分の分だけでなく、小豊島(おでしま)の畜産農家2軒分の飼料も作っていたそう。

ある時、全国放送のテレビ番組に取り上げられ、放送直後から電話が鳴りっぱなしの状態になったという。

ブランド化への道のり

試行錯誤の末完成した『オリーブ飼料』を試験的に牛に与え、その牛を内緒で出荷していた。
ある時、めったに褒めることがない食肉業界の社長さんが「非常に脂がおいしい、変わったぞ」と初めて褒めてくれたそう。

うまくいくよう思えたブランド化だったが、道のりは厳しかった。
当時の県の畜産課長に、「新しいブランドを作るには香川県内すべての生産者の同意が必要だ」と言われ、1件1件承諾を取りに回った。

次に「県内の市場、販売店、卸売業すべてのところに挨拶に行って来い」と言われ、事前にオファーを取ってすべてに足を運んだ。
みんな「一所懸命にやれ」と応援してくれたそう。

2010年、生産者ブランド『小豆島オリーブ牛』が誕生。
最初は小豆島独自のものにしようと思ったが、それではブランド牛にならないと思い、県にすべてノウハウを渡し、県全体でブランド化に取り組むことをお願いした。

2011年、香川県ブランド『オリーブ牛』として生産拡大。
認知度も価格も上がり、生産したい畜産農家が増え、島内で150頭前後だった出荷頭数が、現在では県内で約2,500頭(『小豆島オリーブ牛』と『オリーブ牛』合わせて)まで増えている。

《参考資料》

さらに、『小豆島オリーブ牛』生産者はオリーブを与えることで付加価値が付き、堆肥はすべてオリーブ栽培に活用することができ、全部が繋がった。

循環型農業をしたいという長年の夢がここで叶うこととなった。
「みんなで取り組んだことが結果的によかった」と語ってくれた。

香川県から全国へ

『オリーブ牛』を広めるため、生産者、行政、飲食店、ホテルのなどの団体で「一般社団法人讃岐牛・オリーブ牛振興会」を設立。
各地のイベント出展や、和牛オリンピックへの出品など、様々な活動を行っている。

2012年に行われた、第10回和牛オリンピック肥育牛(第9区)において、優等賞、一等賞受賞を獲得。
それをきっかけに全国から注目されるようになり、今では島内のホテルやクルーズ客船などが『オリーブ牛』を提供してくれている。

地元の人はもちろん、島外の方にもぜひ食べて欲しいとのこと。
「子どもの頃に味わった味は一生忘れない」と言われているほど大切な食育。
食の教育をもっと大事にしてほしいと日々願っている。

島内で不定期ではあるが、土庄港や各イベントなどで『小豆島オリーブ牛』の試食会を行っているそう。
運がよければ『小豆島オリーブ牛』が味わえるかも。

他にも、「瀬戸内海タートル・フルマラソン全国大会」や「日本一どでカボチャ大会」の賞品としても提供しているとのこと。
みなさんもぜひ参加してゲットしてみては。

畜産業の未来を担う若手

土庄町地域おこし協力隊 畜産振興 児戸 源太(こと げんた)

農家はキツイ、しんどいというイメージがあるが、石井さんいわく「こんな楽な仕事はない」という。
子どもさんには「小さいころどこにも連れて行ってもらえなかった」と言われたそうだが(笑)
最近では、代わりに世話をしてくれるヘルパー制度があるので、長期の旅行も可能になってきているとのこと。

全国的に第一次産業が途絶えつつある状況について、「若い人に就農してほしい。農業は自分が努力すれば努力しただけのものが返ってくる。そのためには勉強もせなあかんし、あちこちにアンテナを張り巡らせておかなければならない。ブランド化もたくさんの方の人脈があって出来たこと」と語ってくれた。

「これからの農業の未来を担う若手の後継者や新規就農者に期待している。たくさん勉強して、人脈をつくって欲しい」と願っている。

今回、『小豆島オリーブ牛』の生みの親である石井正樹さんの経歴やブランド化に至るまでのお話をご紹介したが、いかがだっただろう。
新しいことにチャレンジする時、ちょっとしたきっかけや周りの方の協力で実現できるのだなと感じた。

石井さんからのメッセージにもあるように、人脈を作るのはとても大事で、今回取材の機会をいただけたのも、農林水産課の担当者と地域おこし協力隊児戸源太さんとの繋がりがあって実現できたことだなと思う。

このブログをきっかけに、たくさんの方に『小豆島オリーブ牛』を知ってもらい、農家あるいは畜産農家をやりたいという人が増えてくれると嬉しい。

取材協力(敬称略)

石井 正樹(小豆島オリーブ牛研究会)

児戸 源太(土庄町地域おこし協力隊)

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