幻のアスパラ「ラスノーブル」苗復活プロジェクト

美瑛の極良食味アスパラガスがあと数年で食べられなくなる！？

美瑛町の独自品種「ラスノーブル」

　北海道のほぼ中央に位置する美瑛町で穫れる農作物は、十勝岳連峰からの良質で豊富な雪解け水と、北海道内でも特徴的な寒暖差の非常に大きい気候により大変良質で美味です。
　特に、５月～６月頃に収穫されるグリーンアスパラガスは、美瑛町の初夏の風物詩として町民に愛されているだけでなく、全国からその味を求めて美瑛町を訪れる方々がいるほどの人気を誇っています。
　その中でも、美瑛町独自の品種である「ラスノーブル」は、風が吹くと曲がってしまうほど柔らかく、かつ甘みが強いことが特徴で非常に人気が高く、2008年のG8北海道洞爺湖サミットでは総理夫妻主催社交ディナーの食材にも抜擢され、世界の首脳陣に「ラスノーブル」が振舞われました。その後もテレビ番組をはじめ各メディアに取り上げられ、全国的に注目を浴びています。

「ラスノーブル」のこれまでの歩み

　ラスノーブルは、元々は「フルート」というホワイトアスパラガス用品種でした。
　他品種より秀でた甘みと柔らかさが特徴のフルートですが、柔らかいがゆえに曲がりやすいなど栽培が難しく、他の市町村では栽培が定着しませんでした。
　美瑛町には、アスパラガス栽培に恵まれた気候風土や培われてきた栽培技術があり、美瑛の土地柄に合った品種として平成３年から栽培が始まりました。その際、美瑛のブランドとして育てたいという思いから美瑛独自の品種「ラスノーブル」（ヨーロッパの騎手）と命名しました。
　その後、ラスノーブルの作付面積は拡大し、平成20年には約113haで栽培されるようになり、美瑛町を代表する品種となりました。

「ラスノーブル」絶滅の危機

　そんなラスノーブルですが、種子の元となる両親の系統が消失したため、平成22年を最後に種子の供給が終了となってしまいました。
　アスパラガスの株は10年程度もつため、現在もまだラスノーブルは出荷されていますが、その量は年々減少しており、今後数年で完全に無くなってしまいます。
　そんなこともあり、人気テレビ番組『マツコの知らない世界』（2019年５月14日TBSテレビ放送）で、幻のアスパラガスとしてラスノーブルが紹介されました。

収穫が大変なアスパラガス

　美瑛町のアスパラガス生産農家の戸数は年々減少しています。
　アスパラガスは収穫期の初夏には毎日手で収穫作業を行わなければなりません。特にラスノーブルは柔らかく曲がりやすいためすぐに収穫しなければならず非常に大変です。
　美瑛町では、生産者の努力により生産を拡大してきましたが、ラスノーブルの種子の供給が終了した平成22年を境に減少の一途を辿っており、10年前と比較してアスパラガスの圃場は7割程にまで減少しています。

絶滅の危機にある幻のアスパラをテクノロジーで守る！

「ラスノーブル」の苗をクローン技術で復活させる

　美瑛町では、ラスノーブルを絶滅の危機から救うべく、町役場とJAびえいが連携し、ラスノーブル苗復活プロジェクトを令和２年度に開始しました。
　また、ラスノーブルの苗の復活に向けて、ある企業との連携を行いました。それは、業務用ワサビの製造で有名な金印株式会社です。
　金印㈱は、ワサビの加工だけでなく、クローンの培養技術を用いてワサビの苗の生産を行っており、その技術を応用することでラスノーブルの苗を復活できるかもしれないと考えたのです。

　令和２年度から、ラスノーブルの株を存続させるための調査研究を開始し、これまでの成果として、現存する株の細胞からクローンの苗を再生することには成功しました。
　しかし、それはまだ実験レベルであり、コストが非常に高く（一般的な苗の20倍以上）、生産者が使えるレベルには達していません。
　加えて、その苗から本当にラスノーブルが収穫できるのか、苗が何年間もつのかといったことも不明です。

幻のアスパラ「ラスノーブル」苗復活プロジェクト

　今回のプロジェクトでは、まず１つ目に、ラスノーブルのクローン苗の安定・効率的な生産に向けた試験研究を実施します。
　２つ目に、アスパラガスの栽培に適した農地を新たに取得・整備し、クローン苗の品質、収量等の栽培試験・調査を実施します。
　３つ目として、クローン苗の安定的な供給・実用化に向けた環境整備等も実施します。
　今回、皆様からいただいたご支援はこの３つの取組を実施するための費用の一部に充てさせていただきます。

日本中の多くの方から愛される美瑛の農産物を存続させたい

「ラスノーブル」を守り町の誇りを守る

　本プロジェクトでラスノーブルの苗を復活し、安定的に生産者へ供給することにより次のことを実現します。

　【 幻のアスパラ「ラスノーブル」とともに、美瑛町の初夏の風物詩であるアスパラガスの生産を次世代につなぐ 】

　農業の町である美瑛町にとって、良質な農産物は町の誇りです。
　G8北海道洞爺湖サミットでも振舞われたラスノーブルを守ることは、美瑛町の農業を守り、美瑛町の誇りを守ることに繫がると私たちは信じています。

　本プロジェクトでは、ラスノーブルの苗の復活によって美瑛町のアスパラガスの生産を維持ではなく強化することで、「幻」のアスパラガスではなく、美瑛町の「特産品」として全国の皆様に届けていくことを最終目標とします。

「ラスノーブル」の生産を途切れさせない

　現存する苗での生産が終わる前にラスノーブルのクローン苗でのアスパラガス生産を開始するため、令和５年度の苗の提供開始を目指します。

プロジェクト関係者の思い

美瑛町農業協同組合　代表理事組合長　熊谷　留夫

　ラスノーブルは、当時の生産者達が何年もかけて色々な品種を試した結果たどり着き、「美瑛のブランドに育てたい」という思いを込めて命名した品種です。柔らかいがゆえに曲がりやすく、見た目は悪いですが、その味は間違いなく良いです。
　ラスノーブルの種がなくなった時、２年ほどヨーロッパ中を探しましたが、どうしても見つかりませんでした。そこで、ラスノーブルと他の品種を掛け合わせて、後継品種を作る試験も行いましたが、それもダメでした。
　今回のプロジェクトで実施する苗の培養は、ラスノーブルを次世代に残す最後の方法です。このプロジェクトの成功は、美瑛の農業の未来につながると信じています。

白金アスパラガス生産部会　部会長　丹野　勉

　ラスノーブルは風で曲がりやすかったり、土埃で簡単に傷がついてしまったり、とても栽培が難しいです。逆に言えば、それだけ柔らかいということであり、食べた際の食感と味の良さは間違いないです。
　私の圃場には、ラスノーブルの最後の年の苗が植えられています。それらが無くなってしまう前にプロジェクトが成功して苗が復活することを祈っています。美瑛の多くのアスパラガス生産者が同じ思いです。
　ラスノーブルがもう幻とは呼ばれないくらいまで増えたときには、美瑛のブランドとしてラスノーブルをさらに盛り上げていきたいです。

ご支援いただける皆様へ

美瑛町長　角和　浩幸

　この度は、美瑛町の幻のアスパラ「ラスノーブル」苗復活プロジェクトに共感いただき、誠にありがとうございます。
　本プロジェクトは農業の町である美瑛町にとって非常に重要である一方で、一筋縄ではいかない長期的で険しい道のりとなります。
　今回のクラウドファンディングでいただいた応援を糧に、皆様のご期待に応えられるよう全力で取り組む所存ですので、ご支援のほど、何とぞよろしくお願い申し上げます。

お礼の品をご紹介！

　今回、プロジェクト限定のお礼の品を多数用意しました。その中には、このプロジェクトのために特別に厳選したラスノーブルもあります。「びえいのラスク」もインターネット販売などはしておらず、現地でしか買えない一品です。
　是非ともご賞味ください。
　また、寄附いただいた皆様に「アスパラの美味しい食べ方！」リーフレットをお届けします。アスパラガスを食べる際にお試しください。