2025/10/14 (火) 16:38
人気返礼品をつくる職人《ひと》 ~鹿嶋市ふるさと納税 特別編 Vo.6(後編)~

この記事について
鹿嶋市ふるさと納税は、鹿嶋市にふるさと納税(ご寄附)をいただく皆さんはもちろん、返礼品を用意していただく市内生産•事業者の皆さんのご協力があって成り立っています。
そこで、ふるさと納税ポータルサイトなどでは伝えきれない、生産•事業者の皆さんが「どんなこだわりや想いを抱いて作っているのか」などをご紹介します。
※最下部にもリンクがあります。
今回は後編として、「鹿嶋パラダイス」で代表を務める、唐澤 秀さんに、鹿嶋パラダイスの目指す未来── 「美味しいものを食べることで、環境を守り、地球を良くする」ことについて、語っていただいた内容を掲載します。
4.美味しいものを食べて、環境を守ることができたら最高
4-1「美味しいもの」はどこにある?
「美味しいものを食べていたい」「素材からすべて自分たちでつくる」
───こうした根源的な欲求のもとに、畑を耕し、素材を加工して提供する唐沢さん。
追い求めている「美味しさ」の8割は作物そのものがもつ遺伝子、残りの2割が自然栽培、と語ります。
「結局、美味しい素材を作ることが、美味しいものを作る元になるんです」
唐沢さんが作っている「鹿嶋在来大豆」は、移住してから知り合った農家さんに教えてもらい育て始めました。
在来種とは、地方の風土に適し、その地方で古くから栽培されてきた品種です。

(写真)鹿嶋在来大豆で作られた納豆・味噌・もろみペースト・醤油
嶋在来大豆の糖度は9.5度くらい。一般的な国産の大豆で平均4度と言われているので、実に約2.5倍の甘さ!ジェラートに利用されるのもうなずけます。
(この大豆を買って自分で味噌を作った人たちが、あまりのおいしさに自分の腕前だと思ってしまうほど!)
「一般的に流通している大豆とは遺伝子的に違うので、全然味が違います。さらに自然栽培でつくりますから、臭みなどもありません」
こんなにおいしい品種なのに、どうしてたくさん作られていないのか、唐沢さんは不思議に思い、なぜかを調べたことがありました。
「市場の評価基準は、色、形、量。その三つが揃っていればいいので、味は関係ありません。当然、買い取り価格には反映されない。
さらには、こんなにおいしい大豆があっても、都道府県の指定品種として指定されていないため、農業共済には入れません。
収益をあげるために大規模で作ろうとしても、急な天候不順などで収穫できない、つまりは無収入になってしまうというリスクがどうしてもあるため、こうしたおいしい品種を作る農家は減っていき、美味しいものが手に入りづらいというわけです。」

農家もひとつの経営団体のため、生産性と経済性に見合った品種をつくらなければ生活できません。そして、スーパーには、そういった野菜が入荷されていきます。つまり消費者は、おいしい品種がこの世に存在するのにもかかわらず、自分で探さないかぎり、美味しさを追求した野菜を食べることができない───。
唐澤さんは、美味しいものを当たり前に食べられるような社会にしていきたいという強い思いがあります。
「ぼくは美味しいこの大豆の種をこの世に残してきて、ずっと継いできてくれた人たちを、ただただリスペクトしています。自分も絶やさずに作り続けていくことは使命の一つです」
4-2世界のどこにもない「1本3万円のビール」
現在、鹿嶋パラダイスでは、海外の愛好家向けに「3万円のビール」の企画をしています。

鹿嶋で作られた自然栽培の麦を使うことはもちろん、鹿嶋の木を切り、3年干した木材で作られた樽でビールを醸造。それを高級感のあるシャンパンボトルに入れます。
包装にいたっても、茨城県内で育てた「こうぞ」から生み出された手作りの和紙を使用し、鹿嶋パラダイスで収穫した藍を使用して藍染めしたラベルや包装紙を使います。
徹底した自然栽培由来の、「オール鹿嶋・茨城」の奇跡のビール ───。
記念すべき節目などのパーティや、大切なひとへのギフトのために選んでもらうことになるでしょう。
「オーガニック製品のなかでも、肥料などを使わない自然栽培で、本当にピュアなもので作ったもの。世界のどこにもない商品です。
それなりの高価な額になるとは思いますが、どうしてこんなに高いの?と聞かれれば、説明を尽くして、この価値観を伝えていきたい」

鹿嶋パラダイスが行う、自然栽培をはじめとした事業は、コストパフォーマンスを追求する手段を選択してきた一般的な大量生産において「選択されなかった」手法を選び続けていると唐澤さんは言います。
「ぼくたちが美味しいと思うものを作るために、その手段として『捨てられた選択肢』を選び続けている。その結果でできた商品の価格と、一般的な商品の価格では、一般的な商品が安いのは当然です。」

「でも、ぼくからしたら「美味しいもの」という『普通』のものを作ってるんですよ。ビールにしてもほかの商品にしても、ただ高いだけ、と言われて終わるのではなく、この『普通』を受け入れてくれるひと、そこに価値を見出してくれる人が増えたらいいなと思っています。そういった方々に伝わるよう、今後も積極的に展開していきたい」
4-3「美味しいもの」が地球をまもる力になる
自然栽培を広めていきたい理由として、作物がおいしくできることだけでなく、環境のためにもなるから。唐澤さんの言葉が熱を帯びます。
「肥料は、オーガニックのものであっても、環境に対しても少なからず影響を与えています。
例えば、北浦や霞ケ浦がなぜ綺麗にならないのかという問題がありますが、その原因のひとつは、農業なんですよ。肥料とか堆肥から染み出た養分が湖沼に流れているんです。
それを分解するために、プランクトンがいっぱい発生するので、結果的に見た目には汚い状態になっているんですよ。」
4年ほど前、国立環境研究所の方が自然栽培のこと勉強させてほしい、と鹿嶋パラダイスを訪れました。唐沢さんがなぜ自然栽培を知りたいのかと尋ねると、霞ケ浦の浄化のプロジェクトをやるなかで、汚れている原因を調査した時に、肥料などを使用する一般的な農業が原因だと判明したと話してくれたそうです。
鹿嶋パラダイスのホームページには、このような文章が掲げられています
鹿嶋パラダイスは「おいしくて、心地よくて、身体にもよくて、地球にもいい」というモノづくりを通してこの世を”パラダイス”にすることを目標としています。
自然栽培により肥料や堆肥を使わないことで、食べた人の体にもよい美味しい作物が生まれ、それでいて自然環境の改善につながり、環境の保護へ貢献できる。
こんなことが実現するとしたら、まさに「楽園(パラダイス)」のようです。

「人間の『おいしいものを食べたい』といった欲望を満たす方向でありながら、環境というか地球を良くなっていく仕組みを作ってあげることが、僕はこの分野でできる唯一の方法だと思っているんです。」
自然栽培でうまれた作物の美味しさが広まれば、同時に自然栽培の需要が高まるはず。
そして、環境への影響が少ない自然栽培が広がれば、結果的に地球を守ることにつながる───
「自然栽培でつくれらたものを、食べたり、飲むほど地球がよくなっていく。買って食べて飲んで、『ああ美味しい、ああ幸せだな』って。それだけでいいんです。それで、地球が良くなっていく。」

力を込めて語る唐澤さんの大きな目は、鹿嶋の大地から未来を見据えています。そしてパッと笑いながら、こうも話してくれました。
「でも、「自然栽培やってるから」じゃなくて、「美味しいからまた食べたい」と言われるようなものを作り上げていきたい。ぼくは死ぬまで美味しいものを食べていたい。自分が美味しいと感じたものを、みんなにおすそ分けして、それもおいしいと思ってもらえたら最高ですね」

店舗情報

Paradise Beer Factory
所在地:茨城県鹿嶋市宮中1-5-1
営業日:毎週木・金・土・日曜日(祝日の場合ランチタイムのみ営業、翌日休業。その他、農作業のため臨時休業あり)
ランチ:11:30~16:00/Beer Bar:火~土曜日 17:30〜22:00
ショップ:11:30〜21:00(時間帯によりスタッフが対応できない場合があります)
【鹿嶋市ふるさと納税の返礼品ページ】

しかふる3号
鹿嶋市ふるさと納税の担当者です。生産者の皆さんの知られざる情熱やこだわりをご紹介します。