匠の技ー新見市が誇る伝統の技術ー

新見市は、ぶどうや桃などの果物・千屋牛・キャビア・ワインなど、“A級の食材”と呼ばれる美味しい食材の宝庫。しかし、実はそれだけではなく、“A級の技術”もあるのです。 それが、“二人の匠”が生み出す刃物。その刃物は、世界の一流料理人から家庭の台所まで、幅広い人々を魅了しています。 この特集では、「武田刃物工場」武田松水さんと「三輪刃物工場」三輪英俊さん、二人の匠をご紹介します。

武田刃物工場 武田松水さん

世界の料理人を魅了する庖丁をつくる「魔術師」

武田松水(たけだ しょうすい)さん

武田松水(たけだ しょうすい)さん

1957年生まれ。1939年創業の「武田刃物工場」代表取締役。大学を卒業後、東京で就職。その後、先代の父親の跡を継ぐため帰郷し、技術を取得。もともと鎌や鉈を作っていたが、庖丁や小刀の製造にシフト。日本だけではなく海外の物産展への出展を通じ、世界中に知られる存在になっている。

世界の台所を魅了する庖丁、それは「武田刃物工場」で作られている。
武田刃物の庖丁を使いたいと、アメリカ・フランスなど世界各地から問い合わせがあり、予約の90%が海外という。世界を相手に刃物のすばらしさを伝える、それが「世界の武田」と呼ばれる所以である。

硬さも切れ味も耐久性もある刃物を作るため、超一級の鋼「青紙スーパー」を使用。この鋼、超一級だけど、職人の手をも煩わせる扱いにくい鋼であり、刃物鍛冶職人の間ではほとんど使われていない。

それでもこの鋼を使うのは「末永く切れる刃物、自分で研いで簡単に切れ味が戻る庖丁」を提供したいから。そのために誰もやらないなら自分がやるだけ。強い想いで何度も何度も作り続け、失敗を重ねるごとに捨てられるスクラップ。そのスクラップの山が大きくなればなるほど、思い描く庖丁作りへの道しるべとなっていった。
現在は、「青紙スーパー」を使いこなす「刃物の魔術師」である。

この鋼に、両側から軟らかいステンレスを重ねた三層の複合材にして、焼いては叩き焼いては叩きを繰り返し薄刃に。これが手に持った時に思わず「軽い!」と言ってしまう軽さを実現している。食材に吸い込まれるようにスッと入っていく切れ味は、刃の重さでなく刃の切れ味がいいから。持続性にも優れており、研ぎの頻度が少なくなるのも嬉しい。

刃だけではなく、柄にもこだわりが。使う人が使いやすい柄を追求し、たどり着いたのが、100年以上和庖丁の柄を作り続ける老舗店が作る紫檀(したん)の八角柄。

全てに妥協しない鍛冶仕事とは、「使う人にとってどうあるべきか」を一番に考えること、その先に出来上がった庖丁をお届けします。

※武田刃物工場の庖丁は「新見市ふるさと納税」で早く確実に受け取れます。

三輪刃物工場 三輪英俊さん

良い刃物は豊かな人生を生むと説く「伝道師」

三輪英俊(みわ ひでとし)さん

三輪英俊(みわ ひでとし)さん

1963年生まれ。市外の大学に通っていたが、跡を継ぐため帰郷。三輪刃物工場の3代目として、屋号「暉光」を継承。1927年(昭和2年)の創業以来、鍛接・鍛造・手砥ぎまで一貫して、手作業での製品づくりを行っている。

「良い道具は、使う人の心や生活を豊かにする」-「三輪刃物工場」三輪英俊さんはそう話す。
鍛冶屋が提供する“良い道具”の条件は、“よく切れ、手入れのしやすい刃物”ということ。高硬度の和鋼「ヤスキハガネ」の両側に軟らかいステンレスを重ねた、切れ味と使いやすさが考えられた農業用刃物・料理包丁は、「三輪刃物工場」の逸品。

「3世代の伝統を継いでいくことも大切だが、時代の変化に対応していくことも鍛冶仕事の役割である。」三輪さんは続けて話す。
例えば、包丁の柄で使っている栗材。水に強く油分が多く腐りにくいため採用しているのは、今この材を使うのが最良と判断しているから。使いやすいと思ってもらうのが一番だから、もっと使う人を満足させられるいい柄が見つかったら、変えていこうと考えている。
より良くなるように柔軟に対応していく、それも三輪刃物工場の魅力である。

“良い道具”の条件のもうひとつは、使う人に合っていること。
「自分に合った道具を使うと、日々の料理や農作業を楽しめる。余計な力を加えずに動作ができるので、体がラクになることもある」そう重ねて話す。
工場には、店舗を併設。実際に商品を手に取って、職人に相談することができる。

消費者の目を見ながら直接その良さを伝える「伝道師」は、県内の朝市などにも積極的に参加。多くの人に、刃物のこと・鍛冶屋の仕事のことを伝えている。

新見の匠が生み出す刃物を確認!

■武田刃物工場

■三輪刃物工場

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