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由緒ある伝統技法を守り 家族で手掛ける色鍋島 泰仙窯(たいせんがま)

〈窯元インタビュー〉泰仙窯:川副 泰治さん

伝統工芸士の看板を掲げ、家族内で分業しながら色鍋島の制作に取り組む泰仙窯。1970(昭和45)年に創業し、現在は親子4人で窯を切り盛りされています。

将軍家や諸大名、朝廷へ献上するため、採算を度外視した最高品質の焼き物としてのルーツを持つ鍋島焼。泰仙窯では、染付の青色に上絵の赤・緑・黄を加えた4色以内で構成される色鍋島を手がけています。

窯主を務める父・川副隆夫さんは絵付けを担当。唐花・牡丹・紫陽花・萩・椿などの伝統的モチーフや、青海波・タコ唐草といった吉祥文様など由緒ある図案を描いています。繊細な筆使いの中にもどこか優しさや温かさが感じられ、手に取った方の心をぽっと明るく灯してくれるよう。

息子さんは、液体状の陶土(泥漿:でいしょう)を石膏型へ流し込んで生地を成形する鋳込み作業をはじめ、絵付け以外の多くの工程を担当されています。

「鍋島焼が完成するまでには、成形・素焼き・下絵付け・釉がけ・本焼・上絵付け・焼成と複数の工程があるので、多くの窯では仕事の効率を高めるため分業制を取っています。
父と妹は絵付けを、私は梅埼や天草の陶土を使った成形をはじめ、ろくろ・釉がけ・窯焚き・仕上げを担当しています」

泰仙窯のもうひとりの絵付師である妹さんは、ヘアメイクアーティストから転身したという異色の経歴の持ち主。現代的な図柄や動物など、自身が惹かれるモチーフを描いていらっしゃいます。
伝統文様である青海波から動物がひょこっと顔を出しているシリーズは、幅広い世代に人気。手に取って猫やウサギ、ライオンやパンダ、カエルたちのコミカルな表情をひとつずつながめていると、こちらまでなんだか笑顔になってしまいます。お茶碗の底には、ご飯を食べ終わったときに「ごちそうさま」というメッセージが現れる楽しい仕掛けも。

取材させていただいたのは、秋の新作発表の準備を進めているタイミング(2021年9月)。ふと横に積まれたケースへ目をやると、焼成前で下絵のみが描かれた状態の小皿が並べられていました。そこには、鍋島焼の概念を軽やかに超えていく、妹さんによって描かれた遊び心あふれるポップなモチーフが。
後継者不足が懸念される工芸品の世界において、子ども2人が技法そして伝統を受け継ぎ、今まさに新しい世界を切り拓こうとしている泰仙窯。日本で最も精巧な磁器と称される伝統的な色鍋島と、新しい感性が吹き込まれた鍋島が同じ棚にディスプレイされている風景は、伊万里大川内山の豊かな未来を映しているようにも感じました。

泰仙窯
〒848-0025 佐賀県伊万里市大川内町乙1835
TEL:0955-23-4676

泰仙窯の作品一覧