【GCF】未来を担う若者のため自治体が足並みをそろえる
ふるさと納税の「モノ」から「コト」へという大きな流れの中で、同じ課題を抱える自治体が広域的に連携し、共通の目標を掲げて寄付金を集めるという動きが出てきています。その一つが、若者の海外留学を支援しようというものです。
グローバル人材の育成を目標に掲げて「トビタテ! 留学JAPAN」を共同で展開
ふるさと納税の「モノ」から「コト」へという大きな流れの中で、同じ課題を抱える自治体が広域的に連携し、共通の目標を掲げて寄付金を集めるという動きが出てきています。その一つが、若者の海外留学を支援しようというものです。
近年、グローバル人材を育成する必要性が叫ばれていますが、日本人の海外留学者数は2004年をピークに、減少傾向にあり、その人数は2015年で5万4676人と、ほかの先進国と比べると少ないといえます。
海外留学は、短期でも数十万円もの費用がかかり、家庭への経済的負担が大きいため、諦めてしまう人が多いのが現状です。そこで、留学促進のため文部科学省は「トビタテ! 留学JAPAN」を展開。官民共働で留学支援を行い、2020年までに留学者数倍増を目指しています。
その取り組みに影響を受け、長崎県平戸市、長野県白馬村、沖縄県宜野湾市、岡山県玉野市、福井県、兵庫県市川町の6自治体が連携して参加する、ガバメントクラウドファンディング(GCF)が2017年に立ち上がりました。寄付者はどの自治体に寄付をするか選択できます。各自治体で目標金額や細かな使途の違いはありますが、「留学をしたいけれど、経済的な理由で諦めざるを得ない状況の若者を支援する」という考え方は共通しています。そして、そんな若者を支援したいという想いが集まり、半年間で、6自治体合計で1000万円以上の寄付が集まりました。その寄付金は、渡航費用や滞在にかかる諸費用など、各自治体で留学生支援のため、有効に活用されています。
オランダの姉妹都市への留学支援|長崎県平戸市
平戸市では2012年から毎年、姉妹都市であるオランダ王国ノールトワイケルハウト市と交換留学を行っており、留学する高校生を募集しています。1人あたりの費用は約15万円で、従来は市がその3分の2を負担していましたが、さら
にGCFを活用し、84万円の寄付を集めました。これにより1家庭あたりの負担額を減らすなど、地元高校生の留学を支援することができました。
村内唯一の高校から飛び立つ|長野県白馬村
北アルプスの山間部に位置する白馬村は、冬季の外国人住民比率が高い自治体。グローバルな視点を持つ人材育成の必要性から、村で唯一の高校である白馬高校は2016年に国際観光科を設立。観光ビジネスや語学などを修めます。同校の2年次の生徒の短期語学留学を支援するために村がGCFを実施。生徒20人分の渡航費や滞在費として計400万円を目標とし、見事達成しました。
普天間基地跡地を担う人材育成|沖縄県宜野湾市
まちの中心部に、移設問題に揺れる普天間基地を抱える沖縄県宜野湾市。基地返還後の広大な跡地(東京ドーム約100個分)で、世界に目を向けて活躍できる人材の育成が求められています。そこで、市では、市内の中学生たちに自己負担ゼロで海外留学を経験してもらうためのプロジェクトを実施。寄付金を活用し、2018年に中学生10名をアメリカへの1カ月の短期留学へ送り出しました。
アメリカへのホームステイを支援|岡山県玉野市
玉野市では1996年から毎年(うち4年間休止)、姉妹都市であるアメリカ・マサチューセッツ州・グロスター市への中高生のホームステイを実施。1人あたり60万円程度の費用が必要となり、負担額が大きく、希望しながらも諦めてしまう生徒もいました。そこで参加者に補助金として上限20万円を交付するためにプロジェクトに参加し、目標金額の約8割となる79万2000円を達成しました。
長期留学に挑戦する高校生を応援|福井県
福井県では2016年に高校生向けの奨学金「福井県きぼう応援海外留学奨学金」を創設。GCFの寄付金を活用することにより、これまで支援制度がなかった海外の高校での修学や、国際的な大学入試資格「国際バカロレア資格」の取得を目指す2年間の留学を支援しました。寄付者に留学中の生活や成長の様子を伝えるレポートを送付し、そのつながりを大切にしています。
町の産業をアピールできる人材を育成|兵庫県市川町
市川町は国産のアイアン(ゴルフクラブ)発祥の地であり、約20社のゴルフ企業があります。そんな町の産業を若い世代が世界へ発信していけるように、外国語指導員を多く採用するなど英語教育に力を入れています。町内の生徒の留学費用のためにプロジェクトを開始。集まった寄付金は、姉妹都市であるアメリカ・ワシントン州のポートタウンゼント市との交換留学に使われました。