お知らせ

ギフト券があたる『チョイストラベル』OPENキャンペーンのお知らせ

たるい産 お米便り ≪はる≫

春霞がかった伊吹山を背に、トラクターが土煙を上げて田んぼの土をかきあげていく。
秋にすきこんだワラの切れ端が混じり、土は黒々としてふんわり。
上に乗るとフカフカしてここちよい。
「春起こし」といいます。
〈桜前線〉を待たず、垂井町の田んぼは動き始めました。

「『土』が生きているんで、美味しいお米ができるんさ」
「イネの茎を割いて中をよくみて、肥やしの『効き』をチェックするね」
「田を起こして、いい土はよい匂いがするので分かります」―。
おいしい米を作る田んぼの〝職人〟さんに、こんな話を聞きました。

米作りの〈作業風景〉が遠くなっています。お米といえば白い湯気と光る白飯、稲刈りの光景が思い浮かびますか。
うまいお米を知り、味わえる人は「幸せ」です。輝くような炊き上がり、鼻に抜け、胃袋にとどく甘い香り。
垂井町では〈米作り〉の前哨戦がピーク。人の顔が1人ひとり違うように、田んぼに〈個性〉があり、職人さんにもこだわりがあります。
米農家は田んぼにあわせ、添うように精魂をこめます。そして、うまいお米が生まれます。
口のこえた都会のお米ファンに令和の垂井の〈農の風景〉をお届けします。

【高木ファーム】髙木浩司さん

【高木ファーム】髙木浩司さん

「いい土はいい匂いがしますよ。田起こししていて分かります」。笑顔で髙木浩司さんは話す。
3月中、田起こし(春起こし)に追われる。稲刈り後がすんだ秋、藁(わら)をすき込む秋起こしはやった。
田植え前には、代かきをする。計3回、田を起こす。「秋は『天地返し』と言うんですよ」。
田起こしは肥料の3要素や微量酸素を補う土の元気回復作業。
5月、水を入れての代かきは田の〈嫌気性〉を高めて植えた苗の活着を促すのだという。
田んぼは1年、嫌気性→好気性を繰り返す。
これにイネの生育のサイクルを合わせてやる。
それで、おいしい米が生まれるという。肥やしは穏やかに効いてくる〈魚粉〉。
食味と味度のよさは「バランスのとれた土づくり」からで、秋にスタート。
令和4年度も地元農協の品評会で2品種で優秀賞をもらった。
「今年はうまかったよ!」、お客さんの生の声に耳を傾けて作業に修正を加えていく。
「手抜きすると味は落ちますよ」。次の作業は、丁寧な〈水の管理へ〉と重点が移る。

【髙木農園】髙木美信さん

【髙木農園】髙木美信さん

「田の草取りなんかしたことない」「田んぼの土は生きてる。
微生物がいる元気な土じゃないとうまい米はとれんよ」。
『土』に関して次々と深い言葉が飛び出す。
田起こしではワラやイネの株をすきこんだ有機肥料にこだわる。
春起こしでは生えた雑草をすきこむ。
秋、栄養分を吸い取られた田んぼに自然の「有機」でチッソ、リン酸など肥料の3要素を補う。
微生物が有機肥料を無機物に変えてイネが吸収するという訳。有機のまま植物は吸収できないから。
その土は黒々として有機物も混じる。田起こしは、おいしさにつなげる作業。
「手間を惜しんだら、いい米はできん」という。元気な田んぼは雑草の種が微生物にやられ生えないという。
夏の酷暑にも敏感。熱にやられると白い乳白粒ができるので、ピークを外すため田植えを少し後にずらす。
研究熱心で「米作りは(毎年、条件が変わり)いつも1年生だよ」と笑う。

【T rice Store】高木誠さん

【T rice Store】高木誠さん

サリーマンをやめて米作農家になった髙木誠さん。
40代の若手。祖父、父に続く3代目だ。
〈AI時代〉を見通しドローン利用など新しいことに挑んでいる。
米離れの時代だが、うまい米を求める層がある。
そこへ、SNSでこまめな情報発信を怠らない。
「農業/発信アカウント」「岐阜の生産農家」「米、もち米、小麦、大豆」などの文字がタグに並ぶ。
「SNSとは相性がいいんです」と笑う。草刈り、お餅つき、稲刈りなど農の風景をアップ。
丁寧な米作りは「基本」。SNSで「業者さんから注文がきて驚きました」と手応えを感じ、この先の希望を実感している。
米粉、団子作り、干し柿など農家ならではの商品にも力を入れる。4、5月は「中起こし」と言って2回目の田起こし。
秋耕は終わっており、水と酵素を入れ少し深く耕す。「コナシと呼ぶんです」。
〈こなし〉には、元々、土などの塊をくだいて細かくするという意味がある。
「肥料のタイミングは茎を割いて時期を決めてます」とぬかりない。