お知らせ

【重要】10月からのふるさと納税制度改正に伴う影響について

伝統の食文化を残していく!創業から1世紀続く水産加工会社が守り続ける「生腹出し数の子」のすごい仕事

年末やお正月のおせち料理の定番がイメージの「数の子」。あのプチプチとした独特の食感がたまらない人も多いのではないでしょうか?

でも、普段何気なく食べている数の子がどんな風に作られているか答えられる人は意外に少ないかもしれません。

数の子の原料となる「ニシン」は、実は北海道が全国の水揚げの99%のシェアを誇っていて、道内全域で広く漁獲されているんです。

日本海に面した苫前町に、数の子や身欠きにしんなどを製造する老舗の水産加工会社があります。

「丸や岡田商店」は、創業がなんと1919年の歴史ある会社で、100年以上にわたって北海道のニシンと向き合ってきました。

そんな岡田商店には、今ではほとんど見ることのできない、昔ながらの製法が残されています。

それが「生腹出し」。一度も冷凍していない生のニシンから一匹ずつ手作業で数の子を取り出すという、現代では非常に手間のかかる製法をあえて今も続けています。

今回は、そんな岡田商店の伝統的な数の子づくりを取材してきました!

ニシンは北海道の経済を支える重要な水産資源だった!

かつてニシンは北海道各地で大量に水揚げされ、地域の経済を大きく支えていました。最盛期には北海道だけで年間100万トンも獲れていたというから驚きです。

現在の北海道全体の漁獲量に匹敵するほどのニシンが、当時は一つの魚種だけで獲れていたんですね。

岡田商店が拠点を構える苫前町も、かつてニシン漁によって大きく発展した地域で、明治から昭和にかけて豊富なニシンが水揚げされ活気に湧いていました。しかし、長年にわたる漁獲による資源の減少等で、その後北海道全体で実に約60年もの間ニシンの不漁が続くことになります。

近年は稚魚の放流などの取り組みによって水揚げ量が回復しつつあります。それでも、全国の年間水揚げ量は約1.5万トンにとどまり、かつて豊富に獲れたニシンは、今では国産品がとても貴重な魚となっているのです。

前浜産は日本最北限!?大正時代から続く老舗の数の子づくり

ニシンと密接に関わっている岡田商店の歴史は、もともと網元(漁船や漁網を所有し多くの漁師を雇って漁業を営む経営者のこと)として、ニシンの加工を手掛けたことが始まりでした。

現在は数の子や身欠きにしん、数の子松前漬けなど、さまざまな水産加工品を手掛けていますが、中でも大きな柱となっているのが「数の子」。

同社は北海道の苫前沖や羽幌沖など、地元・前浜で獲れたニシンを買い付け自社工場で加工しており、前浜の原料を使う数の子の加工場としては、もしかすると日本最北かもしれません!?

「昔と比べて、ニシン・数の子加工業者の多くが廃業していってしまいました」

そう話すのは、四代目の代表を務める諸貫社長。築地市場で海外の魚の買い付けや輸出の仕事にも携わってきた、豊富な経験を持つ魚の目利きのプロ中のプロです。

岡田商店では昔ながらの文化を守るため、伝統も大切にしながらも、時代のニーズを柔軟に取り入れることで多様化するお客の声に丁寧に応え続けてきました。

伝統と変化の姿勢を大切にすることが、老舗企業として続いてきた何よりの秘訣なのですね!

鮮度が命の希少な製法!「生腹出し」の数の子

岡田商店の数の子づくりを語るうえで欠かせないのが「生腹出し」という製法です。

一般的な数の子の加工は、ニシンを一度冷凍してから解凍し、腹を開いて数の子を取り出す方法が主流になっているそうです。​冷凍することで作業のタイミングを調整しやすくなり、効率よく加工できるためです。

ところが、生腹出しはその名のとおり、ニシンを一度も冷凍しません。

昔ながらの製法で、水揚げされた生のニシンを塩水に漬け込み、4〜5日ほどかけてお腹の中の数の子をしっかり固めてから、一匹ずつ腹を開いて取り出していきます。

しかも、この方法は冷凍してから加工する場合に比べて、なんと4〜5倍もの手間がかかるのだとか!

「現在、この昔ながらの製法を続けている加工業者はごくわずかだと思います」と、諸貫社長。

では、そこまでしてでも岡田商店が生腹出しにこだわり続ける理由とは、いったい何なのでしょう?

冷凍しないからこそ味わえる、独特の食感

生腹出しの数の子の特徴は、ニシンのお腹の中で形を保ったまま固まるため、キュッと締まった美しい仕上がりになることです。

さらに、冷凍を行わないことで数の子本来の粒立ちが感じられ、口に入れた瞬間の「プチプチッ」という、生腹出し特有の歯ごたえが楽しめます​。そして、卵そのものが持つ濃厚な旨味や磯の風味もより強く感じられるのだそう。

効率を考えれば決して合理的とはいえない製法ですが、それでも「この味だからこそ」と選んでくれるファンの声に応えるため、岡田商店は生腹出しの製法を続けているのです。

そして、数の子づくりにおいて、実は水温管理が一番大変で繊細さが求められる作業なのだそう。

数の子を仕上げる『塩抜き』という工程では、水温が高すぎると色や食感に影響が出てしまうことから、適温を保つために、夏場は冷やした海水を大量に使用します。なんと、タンク1本約800Lの海水を、1日に3〜4回も入れ替えることもあるそう!

一方、冬は水温が低すぎると塩や調味料が浸透しにくくなるため、加工場を暖めたり、お湯や差し水を加えたりして細かく調整します。このように、温度の繊細なコントロールが艶のある美しい数の子づくりには欠かせない工程でもあるのです!

仕上げは熟練スタッフによる「人の目」と「手」で

さらに、岡田商店の品質を支えているのが長年の経験を持つスタッフの存在です。

数の子は、色や形だけでなく触ったときの柔らかさ、崩れやすい「もろこ」と呼ばれる状態などが一つひとつ微妙に違います。

特に化粧箱に詰める様な商品では、色合いまで揃える必要があるため最後は人の目と手で確認します。

選別の工程は特に重要で、担当するのは経験豊富なスタッフに限られており、中には30年近く勤めるベテランのパートさんもいらっしゃるのだとか。

長年の経験から、色や形、触った感触を見極めて選別していく。機械では判断しきれない細かな状態を見抜く力も、岡田商店の数の子づくりには欠かせないのです。

お客さんが喜ぶ「美味しいものを作る」ことをまずは大切に

岡田商店が品質にこだわる理由を諸貫社長はこう話します。

「効率化や利益追求よりも前に、まず食品を作る会社としてお客さんにとって良いものを作ろうとするのは当たり前の義務だと思っています」

数の子は、お正月などのおめでたい席で食べることが多い食品。せっかくの晴れの日に食べてもらうものだからこそ、できるだけ品質の良いものを届けたいという思いがあると言います。

そのために手間がかかることでも、必要であれば惜しまない。生腹出しという製法を今も続けているのも、そんな考えが根底にあるからなのです。

プロのひと手間 冷凍数の子を美味しく食べるコツ

冷凍数の子を美味しく食べるポイントは、「急いで解凍しないこと」です。

冷凍庫から冷蔵庫へ移して一晩かけてゆっくり解凍し、解凍後も更にもう一晩冷蔵庫で休ませます。こうすることで水分が落ち着き、卵の粒が締まって、プチプチとした食感を楽しみやすくなるそうです。

塩数の子の塩抜きには、真水ではなく2%程度の薄い塩水を使うのがコツ。真水だと旨味まで抜けてしまったり、渋みや苦味が出やすくなったりするのだとか。ちょっとしたひと手間で、いつもの数の子がさらに美味しく楽しめそうですね。

簡単アレンジレシピも!

数の子はもっと普段の食卓でもアレンジして楽しむことが出来ます!

例えば、細かく刻んだ数の子をチャーハンの仕上げに加えれば、プチプチとした食感がアクセントに。オリーブオイルやハーブと和えてサラダにしたり、マヨネーズと和えたりするのもおすすめだそう。

お正月だけではちょっともったいない。数の子は意外と普段使いできる食材なんです!

北海道の食文化を伝え、残していく存在を目指して

守るべきものは守りながら、時代に合わせて変えるべきところは変えていく。岡田商店のそんな姿勢には、北海道に根付く食文化を、これからも残していきたいという思いが表れています。

そして今、諸貫社長が考えているのは、ニシンをはじめとする水産資源のこれから。

「今、獲れているからいいのではなく、5年後、10年後、その先も魚が獲れる海を残していく。そのためには、漁師、加工する人、販売する人など、水産業に関わる人たちが、それぞれの仕事を続けていくことが大切だと思っています」と話します。

大正8年に始まった岡田商店が100年以上続いてきたのは、ひとつの製法を守ってきたからだけではありません。北海道の海の恵みから生まれた食文化を、これからもたくさんの人に楽しんでもらいたい。そんな思いを胸に、時代に合わせて変化を重ねながらも、守るべき伝統を受け継いでいく。苫前から北海道の食文化を支える岡田商店の歩みは、これからも続いていきます。

岡田商店の数の子は苫前町のふるさと納税の返礼品になっています。ぜひ一度こだわりの詰まった希少な数の子を、思いを馳せながら味わってみてはいかがでしょうか!