現代の暮らしに溶け込む常滑焼・マルヨ久田製陶所(佳窯)「ban」

愛知県常滑市で、1935年に創業したマルヨ久田製陶所。 長年にわたり園芸鉢や盆栽鉢を中心に製作してきた窯元です。 現在は三代目・久田氏がその技と思想を受け継ぎつつ、食器などの異なる分野のものづくりにも挑戦。 窯元としての可能性を広げてきました。​ そんな三代目が現在取り組んでいるのが「ban」。 これまでの経験値をもって、常滑の伝統的な技法に自身の経験や感覚を掛け合わせ、“食の器”として再構築した唯一無二の常滑ブランドです。

常滑焼の可能性を探る“盤プロジェクト”​

「ban」シリーズのはじまりは、 2012年に発足した常滑焼の可能性を探る“盤プロジェクト”です。
常滑で受け継がれてきた伝統を次代につなげたいという思いで、窯元や急須職人、作家などが、それぞれの知識・技術を結集。
およそ10年もの研究・開発を経て、常滑焼ブランド「ban」シリーズは生まれたのです。

料理を主役にするための器

「ban」は、料理をより美味しく見せるための器です。
一般的な磁器のように光を反射する白い皿とは違い、「ban」は艶を抑えたマットな質感を持っています。
この“艶のなさ”が、盛り付けた料理の色や陰影を引き立て、器ではなく料理そのものに視線を集めます。​

実際に、「ban」はフレンチを中心としたプロの厨房で多く使われてきました。
「料理がきれいに立つ」「余計な情報が入らない」といった評価を受けながら、形や使い心地を進化させてきた器です。​

日常で使える、プロ仕様​

「ban」は「電子レンジ」「食洗器」とも使用可能。
料理を引き立てる見た目でありながら、日常使いの器としての実用性も備えています。
だから、「まずは1枚から」と使い始め、気に入って家族分を買い足す……そんな方も少なくありません。​

\\\°˖✧近日公開°˖✧///

banを形成する要素①:常滑の土

「ban」の原料は、急須に使われるものと同じ常滑の土。
粒子が細かく鉄分を多く含みます。ゆえに、土の表情がそのまま器に残るのです。
思わず触れたくなるなめらかな触り心地や、艶の少ないマットな質感のもととなる重要な要素です。​

「ban」で多くみられる歪みのないフラットなデザインは、焼き物としては反りやすい形状です。
そのため乾燥の工程では、反らないよう重しをのせ、時間をかけてゆっくり乾かします。
夏場で3〜4日、寒い季節には1週間以上かかることもあります。
ユーザーには見えない工程ですが、この“待つ時間”が、使ったときの安定感を生み出しています。

banを形成する要素②:「チャラ」

「ban」の表情を支えているのは、「チャラ」と呼ばれる “液体釉薬”。素地を覆うように厚くかけるのではなく、霧吹きなどを用いて薄く均一にかけて使用します。
表面に指紋が残っていれば、そのまま模様として出てしまうほど繊細な作業。
だからこそ、成形後の仕上げには細心の注意を払います。
一枚一枚丁寧に整えながら、料理を受け止めるための穏やかな肌合いを目指しています。

「盤プロジェクト」では、このチャラの配合を一から研究し、数十種類以上の色を試作しました。
土の表情を消さず、料理を引き立てる色とは何かを探り続けた結果、現在の「ban」のカラーバリエーションが生まれています。​

banを形成する要素③:牡蠣殻の装飾

「ban」シリーズの中でも象徴的な表現のひとつが、表面に広がる模様の意匠です。
これは、牡蠣殻を高温で焼き、粉末状にしたものを、器の表面に振りかけて焼成する技法。
粉は自然に落下し、そのまま焼き付くため、まるで静かに雪が降り積もったかのような、繊細で上品な模様が生まれます。​

一点一点茶こしを使い手作業で振りかけるため、模様の乗せ方や余白のバランスは、偶然性を含みながらも作り手の見極め次第。
同じ柄は二つとありません。​

使用する牡蠣殻は、伊勢湾で海苔養殖に使われ、役目を終えたもの。
海とともに歩んできた常滑の歴史を感じさせる装飾技法です。​