ART 4 HOMETOWN INTERVIEW
面白がり、受け入れる。このまちに息づく「受容力」が表現者の「覚悟」と出会うとき
奥田雄太 YUTA OKUDA
神奈川県川崎市
*神奈川県川崎市中原区のアトリエにて。
神奈川県川崎市は、人口が増加傾向にある数少ない都市のひとつで、多様な人々が集う活気あふれる地域だ。近年では多くのアーティストやクリエイターを惹きつけ、文化の拠点としても存在感を増している。このまちで、ひときわ異彩を放ちながら活動を展開しているのが、アーティストの奥田雄太さんである。
鮮やかな色彩で描かれる「花」をモチーフにした作品で国内外から注目を集めるアーティスト・奥田雄太さん。大胆な絵具のストロークと、ペンによる繊細な線描を組み合わせた独自の表現は、生命力と静けさを併せ持つ世界観を生み出している。近年は個展やアートフェアに加え、ブランドとのコラボレーションなど活動の幅を広げ、多方面で活躍を続けている。
奥田さんは愛知県犬山市で生まれ育った。ファッションデザインを学ぶため専門学校へ進学し、海外留学を経て東京の大手企業でファッションデザイナーとして経験を積んだ。のちに、結婚やアーティストへの転身を機に川崎市へ住まいを移すこととなる。当初は住環境や利便性を考えたうえでの現実的な選択だったが、次第にまちが持つ独特の心地よさやコミュニティの魅力に引き込まれていった。
川崎市に移り住んでから、子どもにも恵まれ家族とともに生活を送ってきた。市内の武蔵新城に制作スタジオも構え、現在は生活と制作の両方の基盤をこのまちに築いている。
「私が育ったのは愛知県犬山市、一方で子どもたちの故郷は川崎市です。彼らにとっての故郷がよりよい場所であってほしいという願いから、自分にできることを日々考えながら活動しています」。言葉が示す通り、奥田さんにとって川崎市は自分ひとりのものではない大切な居場所になっている。彼はなぜこれほどまでにこのまちに魅了されているのだろうか。
現実的な選択の先にあった「しっくりくる」感覚
奥田さんが住まいとして川崎市を選んだのはきわめて現実的な理由からだった。しかし、実際に住み始めてみると、自身の感性に「しっくりくる」感覚や心地よさを覚えた。そして、ファッションデザイナーからアーティストへ転身すると、「しっくりくる」感覚はいっそう確かになっていったと言う。
象徴とも言えるのが、制作活動を始めるため溝口に一軒家を借りたときの出来事だ。「絵描きになろうと決めてから制作場所が必要で、溝口に一軒家を借りました。ふつうはアーティストに制作場所として物件を貸すには慎重になるはずですが、私の場合は出会いに恵まれ、大家さんが面白がって受け入れてくださいました。だからこそ、今の自分があります」。
「大家さん」との関係は、貸主と借主の事務的なものにとどまらなかった。互いに一対一の人間として向き合い、少しずつ信頼を重ねた。その信頼関係は、苦しい状況に置かれた時期にも揺らぐことはなく、むしろ強固になっていった。
奥田さんは当時をこう振り返る。「コロナウイルスの感染拡大で思うように活動ができなかった時期もありました。正直なところ家賃を支払うのも大変でしたが、頑張りましたね。大家さんが私への応援をかねて作品を購入してくださったことも。持ちつ持たれつ、を意識していましたが、むしろこちらが支えていただきましたね」。このまちの人情味が活動を後押しした。
地域ならではのコミュニティから生まれる可能性
奥田さんをさらに引き込んでいったのが、地域のアーティストやクリエイターが集う独自のコミュニティである。このまちで、多くの表現者と出会い、交流を広げていった。
アーティストとしての活動が軌道にのってきたころ、高津のシェアアトリエで制作するようになった。シェアアトリエは、惜しまれつつ廃業した銭湯「高津湯」を改装してつくられた。制作の場であると同時に、地場にゆかりのあるさまざまな表現者が一堂に会する場だった。ひとりきりで制作に向かうのとは違い、同志がそばにいる環境は、常に新たな刺激や有益な情報をもたらしてくれた。
シェアアトリエでの日々は大きな転機となり、その後の奥田さんの活動にも縁が続いていく。現在の制作スタジオは、かつて親しまれた「サウナつかさ新城」を再生した複合施設の一角にある。旧高津湯のシェアアトリエで知り合った人物からの誘いを受け、ここへ入居を決めた。
当初は区画の一部を借りていた。しかし、あるとき上階の区画がまるごと空くことになった。奥田さんは話を聞き「私が全部借ります」と並々ならぬ覚悟で区画を広げ、制作スタジオを整えていった。現在では数十人のアシスタントとともに制作を進行するほどに成長した。
文化芸術の発展に向けてできることを
挑戦を続ける奥田さんが次なる一歩を踏み出した。文化投資型ふるさと納税「ART 4 HOMETOWN(アート・フォー・ホームタウン)」に参画する。アート・フォー・ホームタウンは、地域にゆかりのあるアーティストによるアート作品をふるさと納税のお礼の品として届けることで、文化や芸術を未来へと繋ぐ新しい寄附のかたちだ。
今回の取組をきっかけに、奥田さんと川崎市財政局寄附財源担当 竹田さやかさん・小島佑介さんの対談が実現した。
奥田さんが感じる川崎市の魅力とは。「このまちは新しい文化を受け入れる懐の深さがありますね。川崎市は、ブレイクダンスにヒップホップやスケートボード、さまざまなストリートカルチャーが生まれてきました。ともすれば異端視されやすいものを文化として真っ当に受け入れる気風があるから、居心地がよいのだと思います」。
川崎市としても、文化や芸術による地域活性化には以前から力を注いできた。川崎市職員の小島さんはこのように話す。「川崎市には岡本太郎美術館や藤子・F・不二雄ミュージアムといった、文化芸術資源が豊富に存在しています。若者文化として発展したストリートカルチャーにも積極的に支援をおこなってきました。近年では、誰もが文化芸術に触れ参加できる環境〈アート・フォー・オール〉を掲げ、実現に向けた多様な取組も行われています」。
また、同じく川崎市職員の竹田さんは、出先でたまたま目にした作品に心を動かされた経験がある。その作品は奥田さんのものだと後から知った。偶然の出会いだったが、地域に素晴らしいアーティストがいることを実感したと言う。こうした経験から川崎市で活動するアーティストを支える仕組みの必要性を強く感じるようになった。「アーティストの活躍を支援する仕組みを川崎市で用意できたら」と思いを込める。
そして、奥田さんが対話の中で丁寧に紐解いたのは、「市民への文化芸術体験の提供」と「アーティストへの支援の充実」を両立することで、文化芸術領域が発展していくという視点だ。
「川崎市では文化芸術に触れられるイベントが各所で開催されていますが、少しもったいない気もしています。市民の関心を深める環境とあわせて、日本や世界で戦えるアーティストを育てる環境も必要です。アートを生業にすると決心したアーティストに対して、行政による支援が広がっていくことを期待しています」。
「誰かのために」、熱意をこのまちから全国へ
今回のアート・フォー・ホームタウンについても、奥田さんと竹田さん・小島さんともに大きな期待を寄せている。
奥田さんはこう語る。「地域の皆さんに頑張っている姿を見てもらいたいですし、何より川崎市に貢献したい気持ちが年々強くなっています。今回の取組は地域への思いをかたちにできる機会です。自分の活動や作品がこのまちに関心を寄せていただくきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません」。
「最近は、ふるさと納税において価値観への共感や寄附の使いみちを重視する方が増えています。そこにアートが加わることで、全国の方や市民の方にとってよい出会いがあるといいなと思います」と竹田さん。「奥田さんもそうですが、川崎市には、みんなのために何かしたいという熱い思いを抱いている方が多いです。アート・フォー・ホームタウンを通じて、そういった思いを全国に発信できたらと考えています」と小島さん。
川崎市の受容力にアーティストの想像力が重なり合う。このまちから、表現者が誇りを持って羽ばたいていく未来は、すぐそこまで来ている。
奥田雄太さんの作品一覧
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Abstract Bouquet 250916 (Gold x Gold)
2026年
寄付先:神奈川県川崎市
¥ 720,000
※ふるさと納税の寄付金額です。実際の作品の価格とは異なります。
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Abstract Single Flower 240604 (Bright Green x Gold)
2026年
寄付先:神奈川県川崎市
¥ 370,000
※ふるさと納税の寄付金額です。実際の作品の価格とは異なります。
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Abstract Single Flower 240103 (Sky Blue x Pastel Pink)
2026年
寄付先:神奈川県川崎市
¥ 370,000
※ふるさと納税の寄付金額です。実際の作品の価格とは異なります。