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個人事業主の場合、ふるさと納税の控除上限額は年末まで確定しません。売上や経費の変動によって所得が変わるため、寄付額の目安を判断しにくいのが実情です。
シミュレーションツールを利用する方法もありますが、多くは給与所得者を前提として設計されており、個人事業主の所得構造に十分対応していない場合があります。特に、青色申告特別控除による所得の変動や、社会保険料控除などの各種控除の影響はツールだけでは反映しきれないこともあり、前提となる数値を入力しても実際の上限額と差が出ることがあります。
そのため、年内の段階では正確な金額を求めるよりも、無理のない目安で寄付を進めることが重要です。
本記事では、個人事業主が寄付額の目安を判断するための考え方として、前年の実績を使った方法と、今年の所得見込みから計算する方法を解説します。
目次

個人事業主にとっての控除上限額は、12月31日に所得が確定して初めて決まるものであり、年内に把握できる金額はあくまで「予測」です。
そのため、計算によって算出した金額も確定値ではなく、実際の上限額と差が出る可能性がある点には注意が必要です。
実務においては、正確な数値を一度に算出するのではなく、自身の状況に合わせて段階的に「寄付の目安」を判断していくことが現実的です。
自身の所得状況や前年からの変動の有無に応じて、適切な方法を選択してください。最終的には12月の着地見込みに合わせて調整を行うことが、無理のない寄付につながります。

この方法は、前年と所得状況や控除の内容が大きく変わらない場合に、既に確定している前年の住民税額をもとに「暫定的な目安」を立てるのに適しています。
この方法が向いている人:
ふるさと納税は所得税と住民税から控除されますが、住民税の控除額には「所得割額の20%」という上限があります。
実際の控除上限額(寄付できる総額)は、この20%に加えて所得税の軽減分などが上乗せされるため、算出される金額はこれより大きくなるのが一般的です。
そのため、通知書で確認できる「所得割額」の20%の範囲内に寄付を収めることで大きく外すリスクは低くなりますが、所得税率や各種控除の状況によっては、この範囲内でも控除しきれず自己負担が増える場合があります。
※「なぜ20%という数字で大丈夫なのか」という詳しい根拠については、次の方法2の段落で解説しています。
個人事業主(普通徴収)の場合、毎年6月頃に自治体から届く「市民税・県民税・森林環境税 納税通知書(※)」を確認します。
ただし、表紙には最終的な納税額のみが記載されているため、同封の「課税明細書(税額の計算根拠が書かれた別紙)」を確認してください。
確認する項目: 「所得割額」の金額
これは、住民税の「算出所得割額」から調整控除を差し引いた後の金額です。
ふるさと納税の上限(住民税側の控除上限)は、この所得割額を基準に計算されます。
なお、住宅ローン控除などの他の税額控除は、この時点では差し引かれていません。
項目名称のバリエーション:
自治体により名称が異なりますが、主に以下のいずれかで記載されています。
確認のポイント:
「市民税」と「府民税(県民税)」に分かれている場合は、それぞれの所得割額を合計した金額を使用してください。
この方法はあくまで前年の実績に基づく目安です。
今年の所得が前年より下がる見込みがある場合、前年の数値を基準に寄付を行うと、控除しきれず自己負担が増える可能性があります。
そのような場合は、次の「【方法2】今年の収入・経費から算出する」とあわせて確認することをおすすめします。

前年と比べて利益(所得)が大きく変動している場合や、独立初年度で前年の実績が参考にできない場合は、今年の着地見込みに基づいて計算する方法が有効です。
この方法では、方法1で確認した「20%目安」よりも踏み込んで、自己負担2,000円に収まる控除上限額をより具体的に見積もることができます。
計算式を用いることで、所得税率や控除の影響も考慮した、より実態に近い数値を把握できます。
手動で算出を行う際は、昨年の確定申告書の控えを参考にしながら、今年の所得見込みをもとに、以下の計算手順に当てはめていきます。
※90%は「住民税基本分(10%)」を差し引いた残りの割合を指します
※1.021は復興特別所得税(2.1%)を加味した係数です
※出典:総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」
計算を始める前に、まずは今年の着地見込みとなる以下の2つの数値を用意します。
① 課税される所得金額
確定申告書の「31番」にあたる金額です。
今年の売上から経費や各種控除を差し引いた、税金の対象となる所得を予測して算出します。
② 住民税の所得割額
方法1で確認した、住民税の通知書にある「所得割額(算出所得割額から調整控除を差し引いた後の金額)」です。
利益や各種控除の状況が前年と大きく変わらない場合は、前年の額を目安として使用できます。
※住民税の所得割額は、売上や利益の増減に単純に比例するものではありません。
売上のほかに、経費の金額や、社会保険料控除・生命保険料控除といった各種控除の金額によっても大きく変動します。そのため、前年から大きな変動がある場合は、確定申告書をベースに再計算するか、安全側に見積もることをおすすめします。
次に、予測した「課税される所得金額」を以下の表に当てはめ、自分の所得税率を特定します。あわせて、計算に使用する「係数」を確認してください。
| 今年の「課税される所得金額」の予測 | 所得税率 | 係数 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0.235 |
| 195万円超 〜 330万円以下 | 10% | 0.250 |
| 330万円超 〜 695万円以下 | 20% | 0.287 |
| 695万円超 〜 900万円以下 | 23% | 0.300 |
| 900万円超 〜 1,800万円以下 | 33% | 0.355 |
| 1,800万円超 〜 4,000万円以下 | 40% | 0.406 |
| 4,000万円超 | 45% | 0.453 |
※係数は、ふるさと納税の控除上限(住民税の特例控除:所得割額の20%)をもとに、所得税の還付分(復興特別所得税を含む)を踏まえて整理した数値です。
具体的には、以下の計算式に基づいています。
用意した「住民税の所得割額」と「係数」を用いて、以下の式で算出します。
この式で算出された金額は、自己負担がおおむね2,000円に収まる目安です。
上限付近では自己負担が増える場合があるため、少し余裕を持って寄付するのが安心です。
【計算例:住民税所得割額が45万円の場合】
課税所得が330万円超~695万円以下に該当するため、所得税率20%(係数0.287)を使用します。
※控除上限に近い金額で寄付を行うと、自己負担が2,000円を超える場合があります。
※本計算はあくまで目安であり、最終的な控除上限額は年末の所得確定後に決まります。
ふるさと納税の控除上限額は、本記事で紹介した計算式(係数を用いる方法)で比較的正確に求めることができます。
一方で、より簡易的な目安として、住民税の所得割額の20%以内に収める方法もあります。
これは、住民税の控除のうち「特例分」に20%の上限が設けられているためで、この範囲に収めておけば、自己負担が2,000円を超えるリスクを抑えることができます。
ただし、この方法は所得税からの軽減分などを考慮していないため、実際の控除上限額よりも低めに出る保守的な目安となります。
そのため、
と使い分けるのがおすすめです。
個人事業主のふるさと納税は、「正確な金額を一度で出す」のではなく、状況に応じて方法を使い分けることが重要です。
まず、前年と所得や控除の状況が大きく変わらない場合は、方法1(住民税の所得割額の20%目安)を使うことで、安全に寄付の下限ラインを把握できます。大きく外すリスクを避けたい場合や、早めに寄付を進めたい場合に適しています。
一方で、今年の所得が大きく変動している場合や、より正確な上限額を知りたい場合は、方法2(計算式による算出)を使うことで、自己負担2,000円に収める目安をより具体的に把握できます。
そして実務上は、まず方法1で安全圏を確認しつつ、状況に応じて方法2で精度を高め、最終的には年末の着地見込みに合わせて調整するという進め方が現実的です。
なお、計算に不安がある場合や、控除の条件が複雑な場合は、税理士に相談する、または会計ソフトと連携して試算を行うといった方法も有効です。無理に自己判断で上限を狙うのではなく、自身の状況に合った手段で「安全に使い切る」ことを意識しましょう。
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