2021/09/10 （金） 08:55

❖ 古より受け継がれた石見の郷土芸能 ― 石見神楽

数々の神楽が日本全国に伝承されていますが、その中でも石見神楽（いわみかぐら）は、勇壮な舞いに煌びやかな衣装が特徴の島根県西部地域の伝統芸能です。
元来五穀豊穣に感謝し、毎年秋祭りには神職によって氏神様に奉納されてきたものです。明治以降神楽は神職から一般庶民に移り、この時期にリズムも従来の六調子から現在主流となっている躍動感溢れる八調子のテンポになりました。
石見人にとって、石見神楽は鎮守の祭だけでなく郷土芸能として広く愛されています。

石見神楽は、例祭への奉納・催事に欠かすことができない石見地方で演じられる郷土芸能です。
活発な石見人の気性そのままに、勇壮な八調子とよばれるテンポで舞われます。舞手の厳粛な所作は、神話の世界を再現させるともいわれています。
絢爛豪華な衣装と、大太鼓・小太鼓・手拍子・笛のメロディーは多くの人を魅了します。
人気の演目「大蛇」は、スケールの大きさとダイナミックな動きに圧倒されると、世界各地で称賛を得ています。

大蛇（ orochi ）石見神楽の代名詞的演目

❖ 大蛇（おろち） ❖ ― 石見神楽の代名詞にもなっている壮大なスケールの演目です
大蛇は 、高天原（たかまのはら）を追放された須佐之男命(すさのおのみこと)が、出雲の国、斐の川の河口で箸が流れるのを見て、川上に人が住んでいる事を知りました。そこに住む老夫婦と娘は「奥山に大蛇が住み毎年出てきて娘をさらってゆき、八人のうち一人だけになった。」と嘆き悲しんでいました。須佐之男命は老夫婦に造らせた濃い酒を大蛇に飲ませて退治します。
この時、大蛇の尾から出てきた一振りの刀を天(あめ)のむらくもの剣と名づけ、天照大御神(あまてらすおおみかみ)に捧げます。のちに草なぎの剣と改名され、三種の仁義のひとつとなりました。助けられた娘、櫛稲田姫（くしなだひめ）は須佐之男命と結婚し地方の産業治水に努力されました。

塵輪（ jinrin ）二神二鬼の壮絶な戦い

❖ 塵輪（じんりん） ❖ ― 塵輪は、鐘馗（しょうき）とともに鬼舞の代表的な演目
塵輪とは、演目中に出てくる鬼の名前で、身に翼があって、自由自在に飛び行く大悪鬼が、何万という兵を連れて、全国の人々を殺し廻るので、時の天皇、14代の帝（みかど）、仲哀（ちゅうあい）天皇は、自らこれに立ち向かい、ついにこれを退治しました。
二神と二鬼の四人組の闘いで、その立ち会いの凄さがみどころです。

秋の訪れとともにお祭りシーズンをむかえましたが、コロナ禍に直面す今…ままならない生活が続いています。島根県西部地域の伝統芸能「石見神楽」も、継承をはじめとするさまざまな問題に直面しています。
このような状況下の中、益田市では石見神楽が日本遺産に認定された５月20日を「石見神楽の日」とし、それらを活かしたまちづくりを推し進め、更に携わる人々の活性化を図っています。
そのひとつとして、石見神楽の現状や抱える課題について、行政や関係者だけでなく、神楽ファンや興味のある方がそれぞれの視点から意見を出し合う、検討チーム「石見神楽のビジョンをつくる研究所 Iwamiカグラボ（いわみかぐらぼ）」が立ちあがりました。
また昨年には、疫病鎮静祈願神楽が奉納され「鐘馗」の無観客ライブが配信されるなど、SNSを使用した情報も数多く発信されています。益田市の魅力のひとつでもある石見神楽をより多くの方々に知っていただき、応援していただければと思っています。
現在は「石見の夜神楽」などのイベントは中止されてはいますが、この状況が少しでも良くなった暁には…ぜひ、益田市で直にこの迫力を体感していただきたい！この想いにつきます。
その日が来るまで、みなさまのご健康を心よりお祈りいたします。