【富士山黒牛】赤身の旨みがクセになる 富士山麓で育つブランド牛

富士河口湖町が誇るブランド牛「富士山黒牛(ふじやまくろうし)」をご存じでしょうか。じつは、高級スーパーなど山梨県内の数店舗でしか手に入らない、知る人ぞ知る貴重なお肉なのです。その名のとおり、富士山を間近に望む抜群のロケーションで育つ牛で、旨みたっぷりの味わいが高く評価されています。今回は、富士山黒牛を肥育する富士ヶ嶺(ふじがね)地区の牧場へ取材を敢行。牛たちがどんなふうに育てられているのか、なぜおいしいお肉になるのか、その秘密に迫ります。

標高1000m。大自然が広がる黒牛のふるさと・富士ヶ嶺地区

「富士山黒牛」が育つ富士ヶ嶺地区は、富士河口湖町の西部、静岡県富士宮市との県境に位置しています。標高はおよそ1000m。町内でも最も富士山に近く、自然豊かな高原地帯です。

市街地からクルマを走らせ、森林を抜け富士ヶ嶺に入ると、牧場でのんびりと草を食む牛たちが私たちを歓迎してくれます。晴れた日には、地区内のあちこちで富士山の大パノラマを楽しむこともできます。

富士ヶ嶺はかつて、草原と森林が広がる未開の土地でした。戦後になって開拓が始まり、乳牛・肉牛が育てられるようになりました。農家たちが努力を重ねた結果、今や山梨県下最大の酪農・畜産地帯に成長。肥育されている牛は、地区全体で約3,500頭を数えます。暑さがニガテな牛たちにとって、ここ富士ヶ嶺の冷涼な気候は理想的なのです。

ゆっくり、伸び伸び、丁寧に。たくましく育つ黒牛

富士山黒牛は、乳牛であるホルスタインに、黒毛和牛をかけ合わせた「キロサ牛」と呼ばれる交雑種。創業70年を数えるお肉の老舗・ミートデリおおた(オオタ総合食品)が「できるだけリーズナブルに、和牛のおいしさを提供したい」と研究を重ね、2015年にブランド化しました。

富士山黒牛は、生後8カ月程度でこの富士ヶ嶺にやってきます。肥育するのは、地区内4軒の農家。独自に配合する飼料、長い年月をかけて富士山から流れ下る清冽な伏流水、そしてたっぷりの愛情で、牛たちは大切に育てられます。

牛の肥育には、「反芻(はんすう)」が重要です。ゆっくり反芻して、食べ物をしっかり消化できる環境を整えることで、牛は健康に育ちます。富士ヶ嶺の農家たちはそのために、牛のストレスを軽減し、伸び伸びと暮らせる環境づくりに日々取り組んでいます。

そして牛たちには、2カ月おきの体重計測が待っています。順調に成長しているか、病気にかかっていないかなどをこまめにチェック。育ち具合によって飼料の組み合わせを変えるなどして、牛の成長をサポートします。

一般的な交雑種よりも1カ月半ほど長い、生後27カ月まで肥育された後、富士山黒牛は私達のもとへ届きます。時間をかけて、愛情を注いで育てられるからこそ、他にはないおいしさが生まれるのです。

リピート必至! あっさりなのにジューシーで、旨みたっぷり。

富士山黒牛の特長は、なんと言っても赤身の旨みです。たくましく育った牛の赤身には、イノシン酸、アミノ酸といった旨み成分がたっぷり。生産者のみなさんは、「サシ(脂肪)ではなく、牛肉本来の赤身のおいしさを感じられるのが富士山黒牛です。とくに若い方に、牛肉のおいしさを知ってもらいたいんです」と口を揃えます。

もちろん、お肉のジューシーさや柔らかさは和牛に勝るとも劣りません。それでいて脂肪分が控えめなので、しつこさがなく、あっさりとした口当たり。ちょっとクセになってしまいそうなおいしさです。

富士山黒牛を楽しむなら、王道はやはりサーロインステーキ。お肉の旨みを余すところなく味わえます。肩ロースは、しゃぶしゃぶやすき焼きで。そしてもも肉は焼肉で頂くのがオススメです。また、販売元のミートデリおおた(オオタ総合食品)は「富士山黒牛ビーフカレー」を商品化しました。隠し味は、山梨県産のワインペースト。柔らかな肉質と、スパイスの豊かな風味が際立つ贅沢なビーフカレーです。いずれも、ふるさとチョイスにラインナップされています。

高原の冷涼な気候の下、清らかな富士山の伏流水を飲み、伸び伸びと育てられる富士山黒牛。その裏には、こまめに健康状態をチェックしたり、ストレスの少ない環境を整えたりと、たゆまぬ努力を続ける農家のみなさんの姿がありました。あっさりなのにジューシーで、旨みたっぷり。そんな富士山黒牛のおいしさを、あなたもぜひ一度、体験してみてくださいね。