【オンラインイベントレポート】地域を変える!クラフトビール・インパクト 〜とことん語ろうクラフトビール〜

【オンラインイベントレポート】地域を変える!クラフトビール・インパクト 〜とことん語ろうクラフトビール〜

2月13日(土)、クラフトビールが好きな寄付者の皆さまをご招待してオンラインイベントを開催。
乾杯から始まり、その後は「ブルワリーの紹介やビール造りに至るまでの道のり」「どのように商品開発を行っているのか」「飲むならこれ! という自慢の銘柄紹介」などなど、クラフトビールの造り手4名によるトーク。こちらでは、その一部をレポートします。

地域を変える!
クラフトビール・インパクト
〜とことん語ろうクラフトビール〜

イベント概要

【開催日時】
2021年2月13日(土)18:00〜20:00

【内容】
乾杯
トークセッション(3部構成)
懇親会

ゲスト紹介

宮崎ひでじビール 醸造長
片伯部 智之(かたかべ ともゆき)

経歴20年(営業4年・醸造16年)。営業畑から急遽醸造へ転身。さまざまな苦難もありましたが何とか乗り越えてまいりました! 皆様に愛される、気持ちのこもったビール造りを心がけ、醸造しています。

宮崎ひでじビール 醸造長 片伯部 智之

Nomcraft Brewing 醸造家、PRマネージャー
金子 巧(かねこ たくみ)

教育大学卒業後は世界を旅し、ポートランドで有田川町のまちづくり団体と出会ったのをきっかけに有田川町へ移住。2019年、2人のアメリカ人と一緒にNomcraft Brewing をスタート。クラフトビールでまちづくりに挑戦中。釣りとカメラとカレーが好き。

Nomcraft Brewing 醸造家、PRマネージャー 金子 巧

RISE&WIN Brewing Co. 醸造部
引田 佑介(ひきた ゆうすけ)

神奈川県生まれ。オーストラリアへのワーキングホリデーの期間中に、現地のクラフトビールに出会う。帰国後にゼロ・ウェイストタウン「上勝町」にあるブルワリー、RISE&WINに入社。新しくてユニークなビールを造り続けている。

RISE&WIN Brewing Co. 醸造部 引田佑介

Kakegawa Farm Brewing醸造長
西中 明日翔(にしなか あすか)

ベルギーにて醸造学を学び、卒業後3年間はベルギー国内の小規模醸造所を幾つも転々と渡り歩き、現場の技術を学びながら経験を積みました。帰国後は静岡県掛川市のKakegawa Farm Brewingで醸造長として地場の食材を取り込んだベルギービールを醸造しています。

Kakegawa Farm Brewing醸造長 西中明日翔

モデレーター

野田 幾子(のだ いくこ)
日本ビアジャーナリスト協会副代表、ビアジャーナリスト、ビアアンバサダー

2007年発売のムック『極上のビールを飲もう!』シリーズを皮切りに、『ビアびより』、『新しいクラフトビールの教科書』など、ビール関連記事の企画執筆に携わる。現在、ペアリングに特化した著・監修書『ビールのペアリングがよくわかる本』、監修したビアコミックエッセイ『恋するクラフトビール』が大好評発売中。執筆のほか、ビアイベント主宰、テレビ番組企画協力、講師なども多数。
JCBA(日本地ビール協会 クラフトビア アソシエーション)認定ビアジャッジ、同ビアコーディネイター。

イベントレポート

おうちでクラフトビールフェスに、乾杯!

乾杯の発声は、イベントのモデレーターも務めた日本ビアジャーナリスト協会副代表の野田幾子さん。ゲスト・寄付者の皆にビールを手にしてもらい、「おうちでクラフトビールフェスに、乾杯!」の掛け声に合わせて参加者全員で乾杯を行いファンにとってはとても楽しい時間が幕を開けました。

トークセッション1部
「ビールは飲む人をハッピーにし、人をつなぐ」

ビールを飲みながらの陽気な野田さんの進行のもと、本編が始まりました。
1部では、和歌山県有田川町に2019年にオープンした「NOMCRAFT Brewing」の醸造・PRマネージャーと担当する金子巧さん、徳島県上勝町で2015年に創業した「Rise & WIN Brewing Co.」で醸造を担当する引田佑介さんに話を聞きました。

皆さんにお話を聞く前に毎回乾杯が行われました(笑)。

NOMCRAFT Brewingは、有田川のまちづくりの中核を担う存在です。ベン・エムリックさん、アダム・バランさん、金子さんの3人が、保育所だった建物をリノベーションしてオープン。ホップの個性を前面に出したアメリカンスタイルのビールがラインアップの中心です。イベントでは、かつて給食室だった場所をビール醸造スペースにしたり、職員室にビールを提供するバーをつくったりと、洒落のきいた醸造施設内を写真で案内してくれました。

金子さんは、訪れた先のアメリカ・ポートランドで、街づくりの視察に来ていた有田川町の人々と知り合ったことをきっかけに同所を訪れ、アダムさんとベンさんに出会いました。有田川町の街づくりプロジェクトが進む中、ベンさんは「クラフトビール造りが街に対していかに好影響を及ぼすか」を記した企画書を提出し、熱意を持ってプロジェクトメンバーを説得したのだそう。

Rise & WIN Brewing Co. は、リデュース、リユース、リサイクルに取り組む上勝町の住人に、「ごみゼロを目指す街づくり」を楽しく理解してもらうために設立されました。引田さんは元々コーヒーの仕事をしていましたが、ワーキングホリデー先のオーストラリアで美味しいクラフトビールと出合ったことが大きな転機に。

好きが講じて現地でクラフトビール造りのキットを購入、実際に造り始めています。帰国後は、知人の紹介でRise & WIN Brewing Co.に入社しています。コーヒーとクラフトビール、同じ「飲み物」ではありますが、引田さんはクラフトビールの「美味しいだけでなく、飲む人をハッピーにする、人をつないでいく」ところに心惹かれ、ビール造りへの道を歩み始めたのでした。

トークセッション2部
造りたいビールの探求と、品質向上への施策

2部では、静岡県掛川市に2018年に創業した「Kakegawa Farm Brewing」の醸造長、西中明日翔さんと、宮崎県延岡市で1996年から続く「宮崎ひでじビール」の醸造長、片伯部智之さんが登場しました。

Kakegawa Farm Brewingは、特産であるお茶、野菜や果物を栽培する地元農家と多くのタッグを組んだビール造りに積極的に取り組むブルワリーです。母親がベルギー人であり、かねてよりベルギービールに愛着を感じていた西中さんは、ベルギービール輸入会社で働いた後、サービスのプロを目指してベルギーの専門学校へ入学。

連日研究のためにベルギービールを飲み続ける中で、「自分だったら、このビールはもっとこう造りたい」と考えだしたことから、進む道を醸造家へシフト。ベルギーの複数の醸造所で醸造技術を磨く中、オーナーの熱望により掛川へ移住、しっかりした基礎と斬新な発想で新しいビールを生み出しています。

片伯部さんが醸造長を務める宮崎ひでじビールが得意とするのは、スッキリ飲めるラガービール。日向夏やマンゴーなど地元特産品を使ったビールもよく知られています。また、宮崎県産和栗を使ったハイアルコールスタウト「栗黒」は世界でも高く評価されるなど、その品質は折り紙付きです。しかし片伯部さんによると、同ブルワリーのスタート当初は、決して高品質なビールとは言い切れませんでした。

「当時は、造り手も飲み手も『ビールのおいしさの基準』が曖昧だったと思います」と片伯部さん。このままではいけないと、ビールの品質向上のためにとった改善策が「徹底した衛生管理」と「ビール酵母の培養」です。前者は工場内の設備(配管)を全てバラして徹底的に清掃を行うこと、後者は酵母を自社で培養する技術と管理方法を身につけ、それを継続することで評価を揺るぎないものにしていきました。

トークセッション3部
ブルワリーがわかる! この1本

3部では、ゲストの4名に「ビール造りで大事にしていること」と、「自分たちを知ってもらうための 1本」を教えてもらいました。

NOMCRAFT Brewingが大切にしているポイントは、以下3つ「Fun──自分たちがワクワクすること、お客さんが楽しんでもらえることをやる」、「Community──地元のコミュニティや作物の力を活かして造る」、「Challenge──情報をチェックし、使ったことのないホップを使ってみる」。

そして、NOMCRAFT Brewingを知るには「ノムクラフトIPA」がおすすめ。3つのポイントがギュッと詰まった1本です。

Rise & WIN Brewing Co.は、ゼロ・ウェイストを目指す上勝町らしく「野菜や果物の端切れのように、通常ならば捨てられるものをビールに変えること」を意識しています。

また、引田さんが自信を持って勧めるのは「ビヨンド・ザ・シー」。塩を使い乳酸菌発酵をほどこした「Gose(ゴーゼ:酸味のあるサワービール)」で、上勝の伊予柑と柚香酢で柑橘の爽やかさがプラスされた逸品です。

Kakegawa Farm Brewingは、「材料を持ち込む農家さんにビールのイメージを話してもらい、依頼者が望むビールを造ることに精力を傾けています」と西中さん。

同ブルワリーらしさを知るには「緑茶ビール」「ほうじ茶ビール」など、掛川のお茶を使ったビールがおすすめ。ビールに入れてもお茶の香りが十分に醸せるよう、ビール専用のお茶を栽培する力の入れようです。ベルギービールを得意とする西中さんが「自分の趣味全開」という「セゾン」「バレルサワー」もお試しください。

宮崎ひでじビールは、前述のように「衛生管理」「ビール酵母の発酵」に心血を注いでいます。

「ビールは酵母が造るもの。醸造家は、ビール酵母が食べる美味しい糖を造ってあげる、『ビール酵母様のお世話係』です」と笑う片伯部さんが自信を覗かせるのは「太陽のラガー」。醸造にエール以上の時間や徹底した衛生管理が求められるピルスナースタイルが、「ひでじイズムの詰まったフラッグシップ・ピルスナー」と自信を持って言えるまでになりました。

最後に参加者からの質問にお答えいただき一旦終了となりました。その後、短い時間でしたが、4名のブルワリーさんと参加者の懇親が行われました。クラフトビールファンである参加者の方々が直接ブルワリーさんと話せる貴重な時間となりました。

ビールに対する考え方や向き合い方は、4者4様。それぞれの信念に忠実に、美味しいビールを造って私たちに届けてくれます。オンラインイベントは、話し手も参加者も好きなビールを片手に、寄付者から醸造家への質問や交流なども含めたひとときになりました。

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